2022年9月1日 認知症には早めの対応が大切!

認知症は早めに対策を講じるかどうかで、その後の生活の質が大きく変わってきます。

その理由と、「医療」「財産管理」についての対応方法についてお伝えします。

 

◆ 認知症 早期発見・早期対応が必要なわけ

認知症は高齢期のライフプランを崩壊させる原因となりかねません。

  1. 仕事をしていても仕事が出来なくなる
  2. 自宅で暮らせなくなる
  3. 施設に入っても状態が悪いと施設にも居られなくなる

現在の医療では多くの認知症は、完治することは出来ませんが、早い段階で治療を始めれば進行を遅らせることも可能です。

早めの見極め、早めの対応が重要になります。

 

対応としては、

  1. 医療面での対応:早い対応で回復のチャンスが広がります
  2. 財産に係る対応:認知症になると預金が引き出せなくなるなど、財産管理が不自由になりますが、症状が軽いうちに対策をとれば財産管理の選択肢が広がります

 

◆ 医療面での対応

 認知症には基本的な治療が困難な認知症(アルツハイマー型、レビー小体型など)と治療可能な認知症(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など)があります。

アルツハイマー型認知症などは、

・できるだけ症状を軽くし、進行の速度を遅らせることが、治療目標となります。

・治療法には薬物療法と非薬物療法があります。

 

今後の期待

アルツハイマー型認知症の原因は、脳内にアミロイドβが蓄積して、神経細胞の変性に関係すると考えられています。

・アミロイドβを蓄積させない、または除去する治療法を開発しようと、世界中で開発が進められています。

・アミロイドβの蓄積を阻害する薬が開発されれば、アルツハイマー型認知症の進行を完全にストップできる可能性があります。

・ただし、一度消滅した神経細胞は再生しないため、発症前の段階での早期発見、早期治療を行い、新薬の開発を待つという対応が、ますます重要になってくると指摘されています。

 

◆ 財産管理

 銀行でのお金の引き出し、不動産売買、賃貸借契約、遺産分割など「法律行為」は原則判断能力がないとできません。認知症で判断能力を失ったと判断されると金融機関から年金を引き出せない場合もあるなど大きな制約を受けます。

判断能力が不十分になってからでもとれる対応と、判断能力が十分にあるうちでなければとれない対応に分かれます。主な制度を見てみましょう。

 

➤判断能力が不十分になってからでもとれる対応

<法定後見制度>

本人の判断能力が不十分になった後に,家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度。

・家庭裁判所に申し立てを行えるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など。申し立てを受けた家庭裁判所が後見人等を選任し、その者を介して本人の口座から必要な資金を引き出し、使用します。

・申立人は後見人となる人物として親族などを推薦できますが、家庭裁判者が弁護士や司法書士など専門家を選任することもあります。その場合は一定の報酬を本人の財産

から支払う必要が生じます。必要に応じて家庭裁判所が後見監督人を選任します。

・後見人は財産管理と身上監護を行います。

 *身上監護とは被後見人の住居の確保及び生活環境の整備、施設等への入退所の手続きや契約、被後見人の治療や入院の手続などを行う事。

・本人の資産は厳格に守られます。

・株式投資や不動産活用など、少しでも財産が減るリスクのある行為は原則認められません。

 

➤判断能力が不十分になる前にとれる対応

<任意後見制度>

本人が十分な判断能力を有する時に,あらかじめ,任意後見人となる人や将来その人に委任する事務(本人の生活,療養看護及び財産管理に関する事務)の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行います。

・後見人は財産管理と身上監護を行います。

・任意後見制度を使って親の財産管理を行えば、原則、法定後見制度より管理できる事柄の範囲が広がります。

 

<家族信託>

家族信託は、信託契約の下にごく身近な家族など信頼できる人物に一旦自分の財産を移転させ、その財産の管理や運用など手間のかかることを任せた上で、そこから生じる利益だけを享受できる法的なスキーム。

・家庭裁判所の関与はありません。

・身上監護は出来ません。

 

それぞれの制度に、メリット、デメリットがあるため、たとえば、任意後見と家族信託など、異なる制度を併用する場合もあります。

 

【制度を併用した例】

 

 

◆ まとめ

 銀行でのお金の引き出し、不動産売買、賃貸借契約、遺産分割など「法律行為」は原則判断能力がないとできません。認知症で判断能力を失ったと判断されると金融機関から年金を引き出せない場合もあるなど大きな制約を受けます。

判断能力が不十分になってからでもとれる対応と、判断能力が十分にあるうちでなければとれない対応に分かれます。主な制度を見てみましょう。

 

認知症への対応

 ①認知症になりにくい生活を!運動、食事、コミュニケーション。

 ②「おかしい!」と感じたらすぐ、すぐチェック!

 ③早めの診断、早めの対策

  ・医療面での対策:薬によるもの、運動などによるもの。

  ・財産管理面での対策:財産の使い方を考え、信託、後見などの準備。

 ④家族、医師、社会福祉士、FPなどと連携しながら対策を進める。

 ⑤安心と健康を回復。人生100年時代を楽しむ!

 

 

 -------------------------------------

 「 生活のお役立ち情報」 トップページ

 -------------------------------------

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   福本 芳朗  CFP®  

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

【免責事項】
 かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。