2021年4月15日 ビットコイン投資は何が問題なのか?

 

 昨年秋以降、ビットコインが急騰して話題になっています。投資ファンドの一部に組入れられたり、著名な機関投資家や法人が購入したり、といった話題がマスコミにも取り上げられ、皆様の中にも乗り遅れて利益獲得のチャンスを逃すのでは、などと気になっている方がおられるかも知れません。ビットコインへの投資は本当に私たちの資産形成に寄与するものなのでしょうか?ビットコインについては2017年11月に1度ここで取り上げましたが、今回もう1度、最新の状況を踏まえて考えてみたいと思います。

 

ビットコインとは何か?

 ビットコインは「サトシ・ナカモト」と名乗る人物の論文に基づいて2009年1月に誕生した暗号資産(仮想通貨)で、インターネット上に電子データとして存在しているだけで、国や中央銀行等の保証もなければ、金のように素材としての価値もありません。公開されたプログラムによって、発行のタイミングや量が規定されていると共に、管理コストが低廉にもかかわらず複製や詐取が事実上不可能な仕組みができあがっていて、限られた供給の中で需要が拡大するとその価格が高騰します。

 当初は法定通貨の信頼性が低く他の通貨への交換が規制されている国で注目されていましたが、中国当局の取引禁止令を経て、2016年から2018年初頭にかけて日本の個人投資家の間で人気が高まり話題になりました。仮想通貨取引所での仮想通貨流出問題が発生し、日本ではしばらく下火になっていたのですが、直近では舞台を米国に移して急騰が再開したものです。

 日本でもその影響を受けて再び話題になっています。数ある暗号資産の中でもビットコインは60%近いシェアを持つ代表的な存在です。

 

◆高騰するビットコイン価格

 図に示すように、ビットコインは昨年秋から急騰を始めこの3/末までに4倍以上に跳ね上がりました。これから先の変動は分りませんが、2020年から今年に掛けて何故急騰したのでしょうか?要因としては次が考えられます。

  • コロナ禍の影響で各国が大規模な金融緩和政策を取ったため、既存通貨(法定通貨)の信認が低下し、リスク回避の資金が株式市場や暗号資産市場に流入した
  • 買い手はこれまで個人が中心だったが、著名な機関投資家や法人が参入、需要層を押し上げた(マイクロストラテジーやテスラが話題になりました)
  • 金融機関や決済サービス会社でビットコイン等の暗号資産の取扱いが増えてきた

ビットコインの問題点

 ビットコインの価格は乱高下を繰り返しながらも基本的には右肩上がりで、需要層も厚くなってきていることから、今後も価格上昇が見込めそうに見えますが、問題点はないのでしょうか?私は次のような点に注意が必要と考えています。

  • 国や中央銀行から規制が入るリスク。外国との取引に対する規制や金融政策、マネーロンダリング対策等の観点で、ビットコイン等の疑似通貨を野放しにすることは、政府や中央銀行にとって好ましくないと考えられます。法定通貨の価値を弱めたり国の政策を乱したりする懸念があるからです。現に中国ではすでにビットコイン取引は禁止されていますし、主要国の政府や中央銀行のキーパーソンもビットコイン等の暗号資産に対する牽制発言を繰り返しています。
  • ビットコインは発行上限がプログラム的に定められていて2140年には上限に達して新規発行はなくなる予定です。ビットコイン取引の妥当性はブロックチェーンやマイニングという仕組みによって保証されていますが、これはビットコイン・ネットワークに参加する多くの構成ノード(コンピュータ)の膨大な計算競争の勝者が新規発行ビットコインを取得できることで成り立っています。新規発行が無くなった場合、競争の勝者は新規発行ビットコインの恩恵にあずかれなくなります。勝者にはこれ以外に、計算経過時間に発生するビットコイン取引の手数料は入りますが、これだけで動機付けとして十分かは疑問の残るところです。もし、動機付けが希薄化してマイニングが機能しなくなると、取引保証という根源の部分が崩壊する懸念があります。
  • マイニングの計算競争には、理論的には多くの参加希望者が参加できますが、勝ち抜いて報奨としてのビットコインを獲得するためには特殊な専用コンピュータが必要で、参加者は事実上寡占化の傾向にあると言われています。マイニングの妥当性は参加ノードの多数決で決定する仕組みになっていますが、もし特定の勢力が過半数を握れば、マイニングを自由に操れることになり、仕組みへの信任が崩壊すると共に、ビットコイン所有の特定勢力への集中の懸念もあります。
  • 他にも、運営参加者の判断が分かれて分裂したり、ビットコイン取引所等がハッキングされたりするリスクはあり、特定国の軍事開発の資金源になるリスクも指摘されています。
  • マイニングには非生産的で膨大なコンピューターパワーと電力が必要で(計算競争の勝者になるための消費で、当該計算が生産的なものに活かされるわけではありません)、そのエネルギー消費やCO2排出量については、環境負荷の観点で問題指摘が多くされています。

 これらのいずれかの観点又はいくつかが複合化して市場で問題化されビットコインへの不信が増大すれば、それを契機にビットコイン価格が急落、最悪は価格がゼロとなるリスクもあるのです。直近の値動きだけで判断せず、ビットコインが持つ潜在的リスクへの直視が必要です。

 

◆まとめ

 ここ半年のビットコインの高騰は目を見張るものがあって、マスコミでも話題になっています。しばらくは乱高下しながらも更に上値を目指す可能性はありそうですが(勿論、保証の限りではありません)、少なくとも中・長期的には色々懸念材料もあります。本格的な資産形成のための資産配分にビットコインを加えての長期運用を検討するのなら、その仕組み等から来るリスクをきちんと把握してから判断されることをお勧めします。ポスト・コロナは多方面でのデジタル化の加速が予想され、その中にはブロックチェーン等のビットコイン基盤技術をベースにしたものも重要な要素となる可能性は大きいですし、法定通貨のデジタル化等の進展も予想されます。しかし、ビットコイン自体は資産的には何の裏付けもなく、需給だけで価格が決まっていますので、もし何らかの事象発生によって買い手が不在になったら、暴落したり価格がゼロとなるリスクは頭に入れておくことが必要です。これまでの値動きだけ見て軽々しく取引に加わることには慎重になった方が良いと思います。

 以上は個人的見解・認識ですので、ビットコイン投資についての最終判断はご自身で検証の上お願いします。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   鈴木 康文 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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