2019年12月15日 伝説の証券会社ディーラーは消えた

 

 最近、ネットで株式取引をしている投資家の方からディスプレイ画面の売買注文の状況が一瞬に消えたとの話をよく聞きます。
最良の状態で売買注文を出そうとしたら瞬時に先回りされて取引できなかった投資家の方が多いようです。

 

◆ハイ・フリークエンシー・トレーディング

 これは、高速で売買を繰り返すハイ・フリークエンシー・トレーディング業者の仕業と思われます。
海外に本拠を置く高速取引業者は1000分の1秒、100万分の1秒の単位でコンピューター処理をします。人間が行う投資先や売買タイミングを一貫してコンピューターに任せます。
 全てコンピューターに任せるので、経済危機や政治リスク、天災といった事態でもないのに、株価の値動きが乱交上下して市場は混乱します。コンピューターには人間が抱く心理的なものはありません。機械的に処理するので経済や企業業績では説明できない値動きが多くなります。


◆コンピューターによる機械取引

 機械取引の特徴は、1000分の1秒以下の高速取引、24時間常時稼働、膨大なデータを分析し自動で売買することです。
世界の主な高速取引業者は米バーチュ・ファイナンシャル、米シタデル・セキュリティーズ、米HRT、サスケハナ・インターナショナル・グループ、イスラエルのISTRA等があります。
 また、機械取引の有力なヘッジファンドの商品投資顧問の世界大手、英マン・グループの運用資産総額は2019年9月末で1127億ドルとなり世界の投資家から資金が集まっています。
 人工知能(AI)で投資戦略を組むファンドも多くなってきているので、「AI 」と「AI 」のぶつかり合いで、証券会社のベテランのトレーダーでも長年の経験則が通用しなくなっています。筆者が証券会社に在籍していた時(10年以上も前ですが)は会社の自己資金を投資して膨大な売買益を上げる伝説のディーラーがいました。ボーナスは役員よりも多額で札束が立つとの噂もありました。現在はディーラーがディスプレイ画面を見て自己資金を使って売買益を上げるのは機械取引相手では太刀打ちできない状況ではないでしょうか。
筆者が在籍していた証券会社もディーラー部門は既に無くなっています。

 

◆今後の対応 
 個人投資家の方はこの状況にどう対応したらよいのでしょうか。
月並みですが、長期投資に適した銘柄を選択し、分散投資を心掛けることではないでしょうか。勘や経験則に頼らず5~10年単位で成長する企業に投資し、一時的な乱高下には慌てないことです。世界的な投資の賢者ウォーレン・バフェットも言っています。

「他人が貪欲になっている時は恐る恐る、周りが怖がっている時は貪欲に。」

「50年たっても欲しいと皆が思うものをつくっているか、これが投資判断の基準だ。」
 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  金井 剛  AFP

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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