2019年9月15日 相場の神様からの伝言

 

 

いよいよ「相場秋の陣」の幕が上がった。為替市場一筋48年の経験から、国際金融市場は、今は1年で最も変動が激しい時期だと、武者震いしている。

世界的に夏休みが終わり、特に欧米では11月の感謝祭までの約2か月半が、1年の総決算の時期となる。

ディーラーたちは、高いボーナス目指して、最後の追い込みをかける。

◆為替市場は、常在戦場
 外国為替市場に足を踏み入れてすでに48年。国際的な為替ディーラーの親睦団体の標語に、“once a dealer, Always a dealer”という言葉がある。砕けて言えば「ディーラーは、一度やったらやめられない!」だが、私はまさにその通りの人生を続けている。

しかしこれは「為替市場は、瞬時に攻守ところが変わるのは当たりまえ。常に常在戦場だ。どのような仕事でもディーラーの気持ちを忘れず、一時(いっとき)も気を緩めてはならない」という戒めの言葉でもあり、大事にしている。


◆ドル円相場の歴史
 さて、私が為替市場に足を踏み入れたのは、1971年のニクソンショック直後。

 米ニクソン大統領の突然の金兌換停止の発表で、為替市場は大混乱。円相場は360円の固定相場制から時を経ず308円となり、1973年2月からは相場は市場が決める変動相場制に移行した。

 それ以降米ドルは下落を続け、2011年には75円32銭とドル最安値(円の最高値)を記録、40年で円は約4.8倍の強さになった。今日現在は107円前後、果たして今後100円割れとなるか、120円に戻るか? 今は、2020年を見据えて、相場を展望する時期でもある。


◆投資通貨は高い国(通貨)

 「相場は市場に聞け」という言葉がある。ニュースに対する市場の反応、相場の方向性、動きの強さを見れば、何が相場変動の要因になっているかがわかる、という意味である。

 今でいえば、さしずめ、1にトランプ米大統領、2にパウエル(米中央銀行FRB議長)、3にジョンソン英首相に聞けとなる。これがキーパースンである。

 そして、別の視点で選ぶと、1に世界の覇権争い(国と企業の成長性・収益性への影響度)、2に金利(景気)、3にブレグジットとなり、これをキーワードという。そして強さを測るのは、「高さ」である。すなわちキーパースンの言動やキーワードから、安定性、成長性、金利の高い国を選び買う(投資する)ことになる。この言葉から出るメッセージを短期的、中長期的に相場の行方を考えることになるが、2019年中で見れば、1に米国、2に日本、3,4がなくて、5にユーロ/ポンドとなる。


◆重要なAIのメッセージ
 と言っても、米ドルの弱さも無視できない。これから2020年に向かって、今の高さ(成長、金利、政治の安定性)が続くとは思えない。政策の変更や経済指標の発表により、瞬時に心理が逆転することも市場の常だからである。

 為替市場はサッカーと同じ(攻守がはっきりしている野球ではない)と考えればよい。その変化スピードはますます強まっている。それがアルゴリズム取引であり、相場予想を難しくしている。

 現在の為替取引の8割以上はAIディール(ビッグデータで単語と売り買いと紐づけし、多い言葉の方向でPCが自動的に注文を出す)と言われており、これがアルゴ取引である。今年1月2日のドル円暴落はまさにこのアルゴ取引の仕業であった。


◆100円割れを目指す円
 以上を総合的に考えると、2020年に向かっては、トランプ大統領の一国主義のほころびが顕在化し、また中ソを中心としたドル離れが浸透して、ドルの高いバーが徐々に下がっていく絵が浮かび上がる。そして2020年は米大統領選挙の年(11月)。米景気後退も加わり、ドルは下落、100円割れが現実化すると身構えている。  

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  小池 正一郎 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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