2017年3月6日 「住宅は耐久消費財(消耗品)か資産か?」

 日本の住宅、特に木造の戸建住宅は建築後20~25年程度で、経済価値は0になると言われています。事実、住宅ローンを組んで中古戸建を購入する場合、築20年を超える木造建物は、金融機関の査定では評価0とされる事が通例です。この様に日本では従来、建物(特に木造戸建)は消耗品同様の扱いをされています。今回は、新築住宅に比べ圧倒的に比べ低い中古住宅についてお話しましょう。

 

 日本では住宅購入に占める中古住宅の割合は約14.7%(2013年)と、新築住宅に比べ圧倒的に低くなっています。一方欧米先進国では、建物の維持・管理に手間とコストを掛け、その経済的価値を50年、70年と長く維持しているケースが多く見られます。そのため、日本とは逆に、欧米先進国では住宅購入に占める中古住宅のシェアは70~90%に達しています。
 近年、日本の少子高齢化の急速な進展や世界的な環境意識の高まりを背景に、欧米に比べ耐用年数・経済価値年数の短い日本の住宅事情(特に戸建)を見直し、住宅及び居住環境の質的向上を求める声が高まって来ています。その様な社会的要請に応えるため、政府は平成18年6月に住生活基本法を制定し、住宅政策の「量から質への転換」を表明しました。住生活基本法は今年3月にも見直しがあり、新たな「住生活基本計画」が閣議決定されました。
 その中で住宅の資産価値を維持し、しかも高めて、中古住宅流通を促進させるために注力する事が謳われており、「住宅すごろく(注・参照)を超える新たな住宅循環システムの構築」が目標の一つに掲げられています。そこには以下の方針が記されています。

  1. 住宅の価値が低下せず、魅力が市場で評価され、流通する事により資産として次の世代に承継されて行く新たな流れの創出。
  2. リフォーム投資の拡大と住み替え需要の喚起により、多様な居住ニーズに対応すると共に、人口減少時代の住宅市場の新たな牽引力を創出。

また上記を実現する為に、以下の施策が挙げられています。


① インスペクション(建物状況調査)や住宅瑕疵保険等の活用による品質確保。
② 住宅性能表示、住宅履歴情報などを活用した消費者への情報提供の充実。
③ 既存住宅の価値向上を反映した評価方法の普及・定着。
④ 長期優良住宅等の良質で安全な新築住宅の供給。
⑤ 住宅を担保とした資金調達(リバースモーゲージ等)を行える住宅金融市場の整備、育成。

 

 「住生活基本計画」が予定通り実施されれば、住宅性能表示や長期優良住宅等の認定を受けた良質な住宅を購入し、定期的なメンテナンスを実施しながら、それらの履歴をしっかり記録しておくことで、将来的に住宅の資産価値を長く維持して向上することが可能になると考えられます。「住宅は消耗品」との従来の価値観が大きく変わり、中古住宅の価値が正しく評価され、「資産」として認識される時代が、すぐ目前に迫っているのかもしれません。

 

(注)住宅すごろく
 生涯の住まいの変遷をすごろく(双六)遊びに例えた表現。単身時代のアパート暮らしから結婚後の賃貸マンション、分譲マンション住まい等を経て、庭付き一戸建住宅の購入を最終ゴールとする人生模様を指す。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)代表理事 堀江 雄二 (CFP®) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年8月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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