2017年1月15日 「老後資金の貯め方が劇的に変わる!」

~税制上のメリット満載の確定拠出年金法の改正とは~

 

 2016年5月、確定拠出年金法の改正が国会を通過し、2017年1月からは、今まで様々な税制の優遇措置がある確定拠出(以下DCという)年金制度を使えなかった専業主婦などの第3号被保険者、企業年金加入者、公務員等、約2600万人が新たに個人型DC年金制度に加入可能となりました。この改正によって、少し条件があるものの、実質すべての20歳以上60歳未満の国民がDC年金制度の対象者となったのです。「知らない」では済まされない、このお得な制度についてご紹介します。

 

◆際立つ確定拠出年金制度の税制上のメリットとは
 税制上、優遇措置のある貯蓄制度としてはNISAがありますが、そのNISAと比較しても、DC年金制度の税制優遇は際立っています。NISAの場合は、売買したときの利益や配当等の運用益のみが一定期間非課税ですが、DC年金制度は、①拠出時(払った時)、②運用時、③受給時(受け取る時)に、それぞれ税制上の優遇が設けられていることが大きなメリットと言えるでしょう。

 

◆具体的な税制優遇措置とは
 個人型DC年金制度の場合、払った時の掛け金が全額「所得控除」(注1)となります。所得税と住民税の合計税率が20%の人の場合、企業年金制度のない人がかけることのできる年間限度額の27万6千円を払うと、年末調整などで5万5200円が節税できます。その金額は生命保険の保険料控除の金額と比べても格段に有利です。また、運用時の運用益は非課税となります。確定拠出年金制度に加入するとは、そもそも「運用する」ということを考えての様々なメリットを考えた上での加入ですので、投資をすることが前提です。加入後に運用するための投資対象として、個別の銘柄を選んで株への投資はできませんが、預貯金、投資信託、保険等の幅広い金融商品が用意されています。加えて、受けとる時に一時金として受け取る場合は「退職所得控除」(注2)、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」(注3)があり、一時金と年金の併用も可能です。

 

(注1)所得控除:税法では所得控除の制度を設けています。
 これは、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味しようとするためです。それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合には、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引きます。つまり、所得から引かれることで、課税される所得金額が少なく見積もられるというわけです。

(注2)退職所得控除、(注3)公的年金等控除:いずれも所得から引かれることで、課税される金額が少なく見積もられます。それぞれ控除される金額、税率が異なるので、それぞれの個々の事情により、年金で受け取るか一時金で受け取るかで、メリットデメリットが異なります。

 

◆確定拠出年金、加入して運用するためのポイントは
 次の三つのワードから考えてみましょう。

  1. 「コスト」(投資信託の信託報酬や口座管理手数料など)
    資産運用でコストを抑えることは、最も大切なポイントと言えます。DCは、原則として60歳までという長期の運用なので、何よりも負担になるコストは、単年ではわずかな差でも、長期的には大きな違いとなります。
  2. 「分散」
    運用するといっても、投資になじみのない人にはなかなかハードルの高い行動となります。そこで、分散を上手に使うことで、少しでもその怖さを無くしておくといいでしょう。分散の代表的なものには、投資対象の資産を分散する方法と時間を分散する方法があります、資産分散はアセットクラスと呼ばれる株式や債券等への分散です。一方、時間分散は投資タイミングを分散させ、毎月積み立てることで時間分散ができます。
  3. 「リバランス」(運用資産の資産構成比の調整)
    リバランスというのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、投資の世界ではよく使われる言葉ですので、覚えておきましょう。DC年金運用で必ずしなければならないことは、最初にたてた計画と大きく離れていないか、その後の金融情勢の変化に対応しているか等を定期的にチェックして、資産構成の調整をすることです。

◆これから本格的に普及する個人型DC
 2016年9月には、個人型DCの普及促進のための愛称が「iDeCo(イデコ)」に決まり、金融機関は、新たに対象者となる個人のDC年金口座の獲得の動きをスタートさせています。今後は、各種メディア等での個人型DCについての情報を目にする機会も一段と多くなると思われます。充実したシニアライフを目指すため、あまり十分とは言えない公的年金の年金額を補う個人型DC年金は、ぜひ活用したい制度と言えるでしょう。

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 太田陽一 (CFP®) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年12月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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