2016年10月24日 「電力小売り全面自由化」について考える

「電力小売り全面自由化」という言葉を知っていますか?と聞かれれば、ほとんどの方は「知っている」と答えるでしょう。しかし、実際に「既存の電力大手各社から新規参入事業者へ切り替えた」方は、2016年3月23日時点で33万3700件。対象となる6,260万件の0,5%にとどまっているようです。(全国ベース)
実質所得が伸び悩む中で、生活費を押さえたいという庶民の思いは切実なはずですが、それにもかかわらず、あまり電力小売り自由化が浸透していないのです。

 

 なぜ、切り替えが思ったほど進まないのでしょうか?その主な原因は①新規事業者によるサービスメニューもいろいろあるものの、乗り換えるほど魅力のあるプランが少ない。②来年4月に予定されているガスの小売り自由化が実施されれば、今より競争が活発化する可能性があり、それまで判断を保留する方が得策。③移行にあたって疑問点が多くあり、当面面倒なのでそのままにしている、などが想定されます。

 

 では「電力小売り全面自由化」とはいったい何のことでしょうか。これまでは、家庭や商店向けの電気は、各地域の電力会社(関東圏では東京電力)だけが販売しており、電気をどの会社から買うかを選ぶことが出来ませんでした。それが、2016年4月1日以降は電気の小売業への参入が全面自由化され、全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになったのです。

 

 次に、「電力供給の仕組み」についてもお話しておきましょう。電力は発電所⇒送電線⇒変電所⇒配電線の経路をたどり、各家庭に供給されています。つまり、電力の供給システムは(1)発電部門(2)送電部門(3)小売部門の大まかに3つの部門に分類されます。(1)の発電部門は既に原則参入自由になっています。(2)の送電部門は今後とも安定供給を図るため、政府が認可した東京電力(関東圏)が担当します。そこで、今回の自由化は(3)の小売部門において新たな業者が参入できるようになったということなのです。

 

 ここで本題です。「電力の小売り全面自由化」によって何がどう変わるのでしょうか?一番大きな変化は、様々な事業者が電気の小売市場に参入してくることで、競争が活性化し、様々な料金メニューやサービスが登場することが期待されることでしょう。
都市ガス系では東京ガス、大阪ガス等。ガソリン系ではJXエネルギー、東燃ゼネラル石油等。通信会社計ではAU、J-COM等。5月12日時点では295社が登録されています。選択肢が多すぎて困るくらいですね。既に事業者の特性を生かしたプランが数多く提示されています。新規参入業者のホームページに入り、実際の自分の電気料金を入力すると、いくら安くなるかシュミレーション出来るので、おおよその新料金が解ります。いくつかの電力会社の中から、自分のお住まいの地域、家族構成、ライフスタイルを入力していくことで何社か比較できるサイトも登場しています。(参考:https://enechange.jp/)

 

 いずれにしても、来年4月にはガスの自由化も決められており、電気、ガスそれぞれが自由化されることにより、消費者の選択枝が広がる大きなメリットがありますが、同時に、料金メニューやサービスの内容を見極める判断力も求められることになりそうです。
少しでも家計のためになることであれば、いつの時点で実行するにしても、このチャンスを見逃す手はありません。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 網野 俊(CFP® 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年6月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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