2016年9月7日 「平成27年税制改正の注目すべきポイント」

 平成27年12月24日、28年度税制改正の概要が発表されましたこの時点で閣議決定された大綱の中身はA4でなんと108ページ分もあります。今年度の内容は、経済の好循環を確実なものとする観点から、成長志向の法人税改革等、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入、少子化対策、教育再生や地方創生の推進等、震災からの復興を支援するための税制上の措置等々多岐にわたりますが、私が特に注目する改正、個人所得課税に関する内容をご説明しましょう。

 

(追記 *掲載のタイミングが少し遅くなりましたが、ご了承ください)

 

 

◆空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の導入に注目!
  これは、「相続により生じた空き家であって旧耐震基準しか満たしていないものに関し、相続人が必要な耐震改修又は除却を行った上で家屋又は土地を売却した場合の譲渡所得について特別控除(3,000万円)を導入する。」という制度です。この減税措置はいま大きな問題になっている「空き家問題」の一部解消に大いに立つでしょう。現在の税制では、譲渡した家屋(土地)が居住用のものであれば居住用財産の3,000万円特別控除により譲渡所得から3,000万円を差し引く事ができます。この3000万の控除は相続の場合で被相続人から継続して住んでいた場合のみ適用することができ、空き家の譲渡には3,000万円特別控除は使えないのです。しかし今回の特例が新設されると、相続した不動産を28年の4月以降に売れば、居住用でなくても3,000万円特別控除を利用することが出来るようになり譲渡所得税を気にすることなく売却することができます。

 

◆空き家対策のために法律が施行されている
  平成27年5月26日に「空き家対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。空き家をそのまま放置しておくと老朽化で倒壊や飛散などの被害をもたらす恐れがあることから、この法律が、空き家による悪影響の懸念から始まったものなのです。空き家の中でも、特に管理がずさんな物件に対して、自治体が「特定空き家等」に指定します。この指定を受けた空き家は、行政の判断で取り壊すことができたり、その命令に従わない所有者に罰則が定められたりしたのです。これまでは、倒壊の恐れがある空き家であっても、所有者の許可が無くては、何も対策をうつことはできませんでしたが、この法律によって、長年放置している空き家に、行政から取り壊し命令がくる可能性がでてきます。このような空き家に対しては調査・現状の把握などをし、解体の通告や強制対処が可能になるのです。そして特定空き家への自治体からの改善勧告があると、土地に対する固定資産税の特例(優遇措置)がなくなる点にも注目です。この優遇措置とは、建物が建っていれば、土地の固定資産税が6分に1になっていたもので、空き家を撤去して更地にしてしまうと、固定資産税の減額という優遇措置が受けられなくなってしまいます。これが空き家対策措置法です。その結果、空き家撤去費用と固定資産税の増税がダブルで押し寄せてきてしまいます。

 

◆他人ごとではない空き家対策。あなたの場合

 親が住んでいた家を取り壊すのは忍びない、現在の住まいから遠く離れた実家など放置してしまっている、できれば貸家にしたいが、全く借り手が見つからない。こんな理由で見て見ぬふりを続けてきたいわゆる「親の家」に危機が迫っているのをご存知でしょうか。空き家が激増している理由は、やはり少子高齢化の加速でしょう。子どもは実家を出て核家族化が進み、残された親が住む実家に戻るつもりはないとなると、そのまま親の逝去とともに実家が空き家化してしまうという流れです。高齢化によって、「残された実家」の数が加速度的に増えているのです。特に首都圏では、この流れが顕著であり、高齢者(65歳以上)の一人暮らし世帯がビックリするほど増えています。この高齢者の一人暮らし世帯もまた、「空き家予備軍」となっているのです。あなたが親から相続した実家が、特定空き家に指定された場合、あなたならどうしますか?選択肢は①持ち家として自分で実家に住む ②賃貸として貸し出す ③売却するという3つの選択肢があります。あなたが③の売却を選択した場合、譲渡価格の95%が所得としてみなされる為、納める譲渡税は馬鹿にならない金額になり、売却を躊躇することになるでしょう。

 

 これから空き家の売却は大幅に増えることでしょう。親から相続で引き継いだ実家に誰も住まないことによる空き家が沢山あるのですから、実家の売却を考えていられる方たちに、本特例は、大変有利な税改正であることは間違いないのです。28年4月以降(ずれ込むこともある)は、居住していなくても3000万円特別控除が利用可能になる『空き家にかかる譲渡所得の特別控除』の新設を見守っていく必要があるのがお分かりかと思います。これが成立すると最高600万円の減税が受けられますので、特に売却を考えている方は税制改正が間違いなく実施されるか、もっと先の施行の可能性があるのかという実施時期を確認の上、判断すべきでしょう。適用できるかは慎重に検討しないとできない場合もありえますので、慎重に注意していく必要があり、税務署に相談しながら進めるのが良いでしょう。

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 青木 信三CFP®税理士 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年3月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

【免責事項】
 かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。