「米国中流家庭のように資産1億円をもつ」もシリーズ第12弾になります。
今回は、「退職後に資産運用を続けることの難しさ」を取り上げます。
◆退職後に資産運用を続けるという発想がない日本人
本シリーズ、その五で、「超長期の視点」で人生100年すべての期間を使って資産形成をしていきましょうと説明しました。
しかし、そんなことを言っても、響かないよということを教えてくれる本を読む機会がありました。
先月新刊として出版されたばかりの本で、皆さんも読んでいただきたいのですが、野尻哲史氏著の「60代からの資産「使い切り」法」です。
同著で、野尻氏は、「資産活用期」と称して、退職後は、運用している資産を取り崩していくことを強く勧めています。
しかし、私たち日本人は、いくつかの理由で、退職後にリスク商品で資産運用を続けるなんて「まさか、そんなことするべきでない」と考えていると同書は指摘しています。野尻氏の論点を中心に、私の意見も織り込んでまとめ直してみました。
① 資産形成を学ぶ機会がなかった
教育界にしても、だれも、資産形成、資産運用について学ぶ機会を設けてこなかった。少し前から高校で資産運用を学ぶ機会を設けていますが、生活者の立場にたった講義になっているか検証が必要でしょう。
② 金融機関は、残高を増やすことにしか価値をみいだしていなかった
利益追求を命題とする金融機関は、残高増やしはしても、残高減となる出金をともなう資産の取り崩しに、注目の眼を向けていない。
③ 税制上の優位が理由で、確定拠出年金を大半の方が、退職時に一時金で受け取っている。本来は、年金なので年金受け取りとすべきところです。超長期運用の機会を失っています。
④ 認知能力が低下したら、資産保全の大義のために、現金化しか対応手段がなかった
⑤ 相続時に現金化が進む
◆運用している資産を取り崩すことのメリットを知ろう
前稿まで申し上げてきたように、インデックスファンドを使い、7‐8%程度という中庸のリスク(価格変動率)の資産配分にして、3‐4%程度のリターンを目指す。高くない期待リターンですが、人生100年、つまり、運用期間が30年から80年という期間を使えば、その間に、10年に一度の大暴落がこようとも、最終的に使える資産の総額は、目指すリターンか、それ以上になることが大いに期待できます。あくまで可能性ですが。
◆大暴落は、つみたて投資では、資産を積み上げる好機
大暴落なしで、資産運用ができたら、もちろん御の字です。しかし、海外株式でも、大暴落の可能性はあります。特に日本の株式は、過去30年に3度の大暴落を経験していますので、10年に一度は大暴落が来ることを想定しておく必要があります。しかし、それを想定しておくと、その大暴落の期間は、資産の積み増しの期間となり、大暴落で絶望を感じるのではなく、買い場ゆえの期待感を膨らます期間に変わります。
◆ではどうしたらよいか
何につけ、金融に対するリテラシー(金融力)を高めることが必要となります。
そのために、一緒に学んでいく機会を提供できるのが、商品販売による利益追求を主目的としない独立系のファイナンシャルプランナーです。より好ましいのが、独立系FPのうち、投資経験を豊富に持つ者をパートナーとして、一緒に、自分の家族の資産形成を考えていくことが大切といえるのです。
手前味噌ですが、私たちKFSC所属のFPにも対応できるメンバーが多数います。
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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 奥田 健一
専門分野:
ライフプランニング、資産形成、保険・年金
主な資格:
CFP®・1級FP技能士
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