2021年9月1日 投資を始める前に知っておきたいこと~特定口座と一般口座の違い~

 

 私が資産運用を始めた時に、最初に困ったのが、「特定口座と一般口座のどちらになさいますか?」と聞かれたことです。「いきなりそんなことを聞かれても」というのが、正直なところでしたが、「そんなことも知らないで投資を始めるのか?」と思われたくないので、「一般口座で」と答えてしまいました。

投資を始めようとして最初につまずくのが、口座開設のときに特定口座と一般口座のどちらを選択するかです。説明を読んでもどちらが良いかわからず、そこで挫折してしまう人もいるようです。口座の名前から、「一般」が付いている方が一般的な口座だろうと思うのは間違いです。

今回は、投資を始める前に知っておくべき、特定口座と一般口座の違いについてお話しします。

 

◆ 投資の利益には税金がかかる

 はじめに、株などの投資で利益が出た場合は、原則として税金が課されます。銀行の預貯金の利息にも課税されていることは、みなさんもよくご存知ですね。

※NISAや確定拠出年金など課税されないものもあります。

 

 株や投資信託を売却して利益が出た場合や、配当金を受け取った場合はその利益に対し15%の所得税、5%の地方税と0.315%の復興税を払う必要があります。逆に損が出た場合は、他の株取引などの利益からマイナスすることができます。

 

 そのため、投資をする人は毎年1月1日から12月31日までの損益を集計し、原則として翌年の確定申告で、収益に対する税金を納める必要があります。

 

 

◆ 特定口座と一般口座の違い

 投資で利益を得た場合は、翌年の確定申告で税金を払う必要があることは最初に説明しました。しかし、一年間の取引を集計し確定申告をするのは非常に面倒な作業です。金融機関が確定申告に必要な書類作成を行ってくれれば、面倒な損益計算をする必要も無く、確定申告が非常に楽になりますね。

 

 この確定申告に必要な一年間の取引を集計した報告書を、金融機関が作成してくれるのが特定口座です。(図1参照)

逆に、投資家が確定申告に関する全ての書類作成を行わなければならないのが、一般口座です。

 

 

◆ 特定口座の源泉徴収「有り」と「なし」の違い

 図1は特定口座と一般口座の概要図ですが、特定口座には源泉徴収「有り」と源泉徴収「なし」の2種類があります。給与と同じように、収益を受取る前に税金を支払うことを源泉徴収と言います。ここでは、株などの売却益や配当金などの収益から、税金を差し引いた残りを受け取る方法が源泉徴収「有り」となります。

 

 特定口座で源泉徴収「有り」を選択すれば、投資に関する税金の支払いは金融機関が処理してくれますので、原則として確定申告をする必要がありません。

※複数の金融機関での損益通算や、損失の繰越など確定申告が必要な場合があります

 

 源泉徴収「なし」を選んだ場合は、確定申告と納税が必要になります。源泉徴収「なし」でも結局は税金を払うことに変わりはありません。

 

 しかしなぜ、源泉徴収「なし」というのがあるのか?というと、資産運用の運用益が年間20万円以下の場合は、その確定申告と納税を免除するという特例があります。そのため、投資額が少なく、どんなに頑張っても20万円以上利益が出ないと思う場合は、源泉徴収「なし」を選ぶという方法があります。但し、運用益が20万円を超えた場合は確定申告が必要になりますので、十分ご注意ください。これは一般口座を選択した場合も同じです。

※源泉徴収「有り」を選んだ場合は、年間20万円以下の収益であっても、20.315%の税金が源泉徴収されます。

 

一口メモ:

確定申告で、上場株式等の譲渡益や配当金等を他の所得と合算して申告する場合、合計所得金額が増加します。そのため、配偶者控除等の各種所得控除が受けられなくなる場合や、国民健康保険の保険料の算定に影響が出る可能性がありますので、ご注意ください。

特定口座で源泉徴収「有り」を選択し、確定申告を行わなければ、このような心配はありません。

 

 

◆ まとめ

  特定口座と一般口座の違いについてお分かりいただけましたでしょうか?「確定申告はしたくない」という方は特定口座で源泉徴収「有り」を選びましょう。

これから投資を始める方は、初めて聞く用語がたくさん出てくると思います。わからないまま放置せず、正しく理解して投資を始めてください。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   植田 周司  CFP®  1級FP技能士

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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