2022年5月15日 危機管理のための地震保険を考える

 地震大国の我が国では、2022年に入ってから震度4以上の地震は21件、震度5以上の地震が6件発生しています。このようにいつくるかもしれない地震に対応するにはどのようにしたらいいのでしょうか。生命(いのち)の保全はもちろんのこと、被災後の復旧対策を考えることが大事になっています。

 

◆ 2022年の地震発生状況と被害額 

 気象庁の発表によると、2022年1月1日から4月23日までに、震度5強の地震は5件、震度1以上の地震は685件発生しており1日平均6件の地震が発生していることになります。また、日本損害保険協会の発表によると、3月16日に発生した「令和4年福島県沖を震源とする地震」の地震保険の事故受付件数は219.204件(3月31日現在)になっています。

過去の被害額の保険金支払状況をみると、「平成23年東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)」では、824,049件、12,881億円(1件当り単純平均額約の1,563万円)の保険金が支払われています。

 

<参考>過去の大きな地震による地震保険支払額順抜粋 出典:日本損害保険協会

地震名

発生年月

支払件数

支払保険金

平成23年東北地方太平洋沖地震

2011年3月

824,049

12,881億円

平成28年熊本地震

20164

214,003

3,898億円

令和3年福島県沖を震源とする地震

2021年2月

264.078

2,427億円

大阪府北部を震源とする地震

20186

152,404

1,206億円

平成7年兵庫県南部地震

1995年1月

65,427

783億円

 

このように、一旦大地震の被害に遭うと被害額が多額になる可能性が高く、復旧するためには保険の力を借りざるを得ない状況になっています。

 

◆ 住宅総合保険・住宅火災保険の補償範囲と地震保険の補償範囲について

 火災保険では地震による住宅の損害を補償できません。地震による損害が補償できるのは地震保険だけです。

火災保険の補償範囲と地震保険の補償範囲を確認しておきましょう。

※地震保険で補償されないもの

①塀・門・エレベーター・給排水設備のみに損害があった場合

②地震等の際の紛失や盗難 など

 

◆ 地震保の加入率について

 損害保険料率算出機構の2019年度都道府県別火災保険契約(住宅物件)に対する地震保険契約の付帯割合表によると、火災保険を契約している人のうち約66.7%の人が地震保険に加入しており、前年度より1.5ポイント伸びています。

①地震保険の加入率が、80%以上の都道府県は以下のとおりです。

  宮城県:87.0%、高知県:86.8%、熊本県:82.3%、宮崎県:83.0%、鹿児島県:81.7%

②地震保険の加入率が、60%未満の都道府県は以下のとおりです。

  北海道:59.1%、佐賀県:58.4%、長崎県:52.0%、沖縄県:57.6%

 

◆ 地震保険の加入方法について

 地震保険へ加入するには、必ず火災保険とセットで契約する必要があります。単独での加入はできません。すでに、火災保険に加入中の人でも、中途付帯することが可能です。

 

◆ 地震保険の保険金額設定と実際に支払われる保険金額について

1.保険金額の設定と設定範囲

 地震保険は保険金額を任意の金額で設定できます。ただし、設定できる金額は以下の範囲が設けられています。

 ①セット加入する火災保険の保険金額の30%から50%の範囲

 ②金額の上限として、建物は5,000万円、家財は1,000万円

 例えば、火災保険の建物の保険金額が3,000万円の場合、地震保険は900万円から1,500万円が設定できる範囲になります。

2.実際に支払われる保険金額

 地震保険は、政府が保険金の支払い責任の一部を負担しています。国の予算のため支払限度が決められており、1回の地震による保険金の総支払限度額は11.7兆円になっている。

支払される保険金額は、損害の程度によって異なり、4段階に区分された基準が設けられており、損害の程度がいずれかに認定されると、設定した保険金額の中からそれに応じた金額が支払われます。

損害の認定基準と支払われる保険金割合 

損害の程度

支払われる保険金

全 損

保険金額の 100

大半損

保険金額の  60

小半損

保険金額の  30

一部損

保険金額の   5

3.損害の鑑定方法

 原則として、損害保険鑑定人などが被災した現場に行き、被害状況を確認して損害の鑑定を行う。

 

◆ まとめ

 地震保険の加入率は、まだまだ高いとは言えません。地震保険未加入の方は加入を検討しましょう。また、地震による建物や家財に損害を受けたら、些細な事故でも加入先の保険会社へ連絡をしましょう。自分では、大したことではないと思った損害でも、一部損の判定を受ける可能性があります。

 

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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   大庭和夫 1FP技能士

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