2022年5月1日 ロボアドバイザーって、本当に投資に使えるの?

 資産運用のロボアドバイザーに対するイメージは、「怪しい」、「本当にお金を託して大丈夫?」、「1%も手数料を取られるなら自分で運用した方が得」という様なネガティブなものでした。ところが、今回改めて調べてみて印象が変わりました。

 

 資産運用の助言をしたり、本人に代わって資産運用をしたりしてくれる「ロボットの資産運用アドバイザー」。日本ではまず2016年頃に参入ブームがありました。最近では「老後資金「2000万円」問題」や直近の「FIER(注1)ブーム」などによる資産形成への関心の高まりとともに、ロボアドバイザー(以下「ロボアド」と略す)へも注目が集まる様になりました。ここでは現時点(2022年5月)で提供されている主なロボアドサービスについて解説するとともに、投資や資産形成へ活用する場合のポイントについても触れます。

(注1)FIER:Financial Independence, Retire Earlyの略、経済的に独立し早期リタイアを目指す

 

◆ 主なロボアドバイザーとその特徴 

 ロボアドには、その名前の通り資産運用のアドバイスだけを行う「アドバイス型」と、本人の代わりに自動で資産運用を行う「投資一任型」の2種類があります。ここでは、最近主流となってきた「投資一任型」に絞り、筆者が注目する6種のロボアドについて、主な特徴を紹介します(図表1参照、情報源は各社ホームページ)。

 

1.「WealthNavi(ウェルスナビ)」(ウェルスナビ株式会社、2016年7月リリース)

 ・運用資産(6000億円超)、運用者数(31万人)でロボアド業界No.1

 ・投資対象は米国ETF、約50カ国11,000銘柄以上

 ・独自の運用アルゴリズムを26ページの資料で、HPで詳細開示、CEOの著書でも紹介

 ・CEOが過去の投資失敗談を著書で公開、自身のウェルスナビ運用実績をHPで公開

 ・SBI証券を始め、多くの大手金融機関等と提携している

2.「THEO(テオ)」(株式会社お金のデザイン、2016年2月リリース)

 ・2013年設立で、ロボアドの先駆者、多くの地方金融機関と連携

 ・投資対象は海外ETF、86カ国11,000銘柄以上

 ・優れた自社開発の運用手法(アルゴリズム)を持ち、運用技術に長けている

 ・運用資産(1224億円)、運用者数(11.7万人)を公開、ウェルスナビ以外では同社のみ

3.「SUSTEN(サステン)」(株式会社SUSTENキャピタルマネジメント、2021年2月一般公開)

 ・日本初の「完全成果報酬型」、益が出た時のみ運用益の1.1/6~1.1/9の費用発生

 ・最新参入で、投資対象は世界中の株、債券、通貨などあらゆる金融商品

4.「おまかせ投資」(株式会社FOLIO、2018年11月サービス開始)

 ・独自のロボ運用技術(AIで予測&学習)を保有、技術に長けた会社

 ・上記技術で「景気循環の予測」、「危機の事前予測」、「金融市場の予測」を行う

 ・金融イノベーションを表彰する「JFIA 2021」大賞を受賞

 ・投資対象は米国EFT(8種類)と少なめ

5.「on COMPASS(オン・コンパス)」(マネックス・アセットマネジメント、2016年9月提供開始)

 ・ロボアドを活用した少額・低コスト型の投資一任運用(ラップ)サービス

 ・投資対象は国内外ETF、80カ国約50000銘柄に分散投資

 ・リスク重視で実現確率80%条件での運用、最少投資額1000円等、初心者向け

6.「楽ラップ」(楽天証券、2016年7月提供開始)

 ・資産配分はマーサー社の助言を基に決定

 ・投資対象は国内投資信託(国内外株式、国内外債券、国内・先進国REIT)

 ・手数料が最安値(0.715%)、最低投資額・最低積立額も低い(1万円以上、1円単位)

 ・9種類の運用資産構成公開、四半期毎の運用実績報告会等、情報の透明性が高い

 

【図表1】主なロボアドバイザーの概要(情報源:各社ホームページより)

 

◆ ロボアドバーザーに、安心して資産運用をまかせられるのでしょうか?

 以上の説明のとおり、図表1に記載した様な「投資一任型」ロボアドは、「ロボット運用サービス」や「デジタル自動運用サービス」と呼ぶ方が適切な状況となってきました。例えば、ウェルスナビ社の柴山CEOは同氏の著書(注2)において「テクノロジーの力を使う事で、富裕層でない日本の一般人でも世界水準の資産運用ができるようにしたいと考え、ウェルスナビを立ち上げた」という趣旨の事を述べています。また、図表1に掲載したロボアド各社は同様の趣旨でサービスを展開しており、それをうまく活用する事で資産運用の成功に繋がる期待が持てます。

(注2)柴山和久(2018)、これからの投資の思考法、ダイヤモンド社

 

 しかしながら、実際に投資する際には、自分の大切なお金を訳の分からないロボットに委ねるのは不安があるはずです。そのため、ロボアド運用を選んでもらうには、投資対象、手数料、最低投資額、アプリの使い易さなども重要ですが、それ以上にちゃんとした運用をしてくれるという信頼感や安心感がより重要となります。

 この様な点に関して、図表1に掲載したロボアド各社は、投資対象の内訳、運用アルゴリズムの特徴、運用実績の開示、分別管理等による資産保全等についてしっかり開示し、できるだけブラックボックス化しない努力をしています。

 

 例えば、ウェルスナビでは、実績開示に当たり柴山CEO自らの運用成績も開示する、運用アルゴリズムについてはホームページや著書の中で詳細に説明する(図表2参照)等、他社を超えるレベルの努力が窺えます。運用アルゴリズム自体は多くの人には難解で理解できないかも知れませんが、同社の顧客重視の姿勢が伝わり、信頼感や安心感に繋がっていると考えられます。この様な対応が、ウェルスナビが預かり資産、運用者数で業界トップとなっている一因と考えられます。

 

【図表2】ウェルスナビの運用アルゴリズム(情報源:柴山CEO著書より筆者作成)

 

◆ ロボアドバイザーのおすすめ活用方法

 ロボアドの特徴を活かすと、以下のような活用が期待できます。

① 初心者の資産運用(簡単な手続きで少額から世界水準の資産運用が始められます)

② シニア世代の余裕資金の運用(「積立投資・運用+取崩し」等で資産寿命を延ばせます)

③ 確定拠出年金、つみたてNISAに次ぐ手間のかからない第三の自動積立投資手段

④ 投資対象(米国ETF等)の特徴を活かし、保有資産の通貨バランスを調整(米ドル運用増)

 

 ロボアド選択に迷った場合は、まずはウェルスナビを第一候補(基準)として検討し、それで足りない点、満足いかない点があればそれを満たす他のロボアドを探す、という方法がお勧めです。

 また、「約1%の手数料がもったいない」、「自分でも運用できるスキルも時間もある」という方には、各社が公開しているロボアド運用のポートフォリオを参考に、「できるだけ類似の資産や商品を選んでポートフォリオ作り、自分で投資する」、という方法も良いでしょう。

 

◆ まとめ

 今回は説明を省略しましたが、ロボアドには「リバランス機能」、「リバランス時の節税機能」、「市況に応じたポートフォリオ切換え」等のきめ細かい対応(=富裕層向けの世界標準の運用)が可能となっています。これが1%程度の手数料でできるなら、充分使う価値があります。一気に全資産をロボアド運用に投じなくても、まずはご自身の資産運用の一部に使ってみる等、うまく活用すれば運用成果を向上させる新たな手段として期待できます。

 なお、本稿の内容はあくまで個人的な見解や、その説明の為の事例です。手法を勧めるものでも結果を保証するものでもありません。実施の際はご自身で判断頂ければ幸いです。

 

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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   三好 正信 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

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