2022年4月15日 株式投資の魅力と向き合い方

  

 株式投資には、資産形成に寄与する可能性が高いという利点がありますが、投資行動自体に魅力がある点も重要なポイントです。今回はそのへんを紐解きながら、現在、世界的問題を抱える中で、株式投資へどう向き合うべきかについても触れてみたいと思います。

 

◆ なぜ株式投資は資産形成に寄与するのか? 

 経験則的にも株式は平均的・長期的には右肩上がりになっていますが、著名なフランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、その代表作「21世紀の資本」で、過去の膨大なデータに基づいて、長期的には主要国の経済成長率は1~2%/年程度なのに対して、株式等の成長率は4~5%/年程度と検証しています。

 個別株式だと、これ以上に成長するものや逆に下落したり消滅したりするものもありますが、平均的には右肩上がりに成長していくと推定されるのです。勿論、世の中には株式で資産を大きく減らす人もいますが、そういう人の多くは株式市場が活況を帯び株式が高騰すると買いたくなり、株式が暴落すると慌てて売却・退場したくなる人だと思います。基本的に株式市場は成長市場なのですから、常に参加し続けて、下落時に拾いながら保有を続けていけば高い確率で資産を増やせるのではないでしょうか。

 私も社会人になって間もなく知識もほとんどないまま株式投資を始めましたが、安易に売買を繰り返さず、基本的には優良株と言われるものを購入して保有を続けることに努めましたので、長期成長の恩恵を享受することができました。「安く買って高く売る」ことは儲けには繋がりますが散財するだけに終わることも多いように思います。

 良い株式を少しずつ増やしながら保有し続けるのが資産形成には1番良い方法ではないでしょうか。この場合、特定の銘柄のみに集中投資するのはリスクが大きくなりますので、できれば、異なる業種、業態の銘柄10以上に分散投資することをお勧めします。外国株式も国内で簡単に取引できるようになりましたので、ポートフォリオに加えても良いと思います。

 尤も、以上の論は過去の長期にわたるデータに基づいたもので、将来も必ず成立するという保障はないことは申し添えておきます。ただ、世界経済が持続的に成長するなら成立する可能性は高いと言えるでしょう。

 

◆ 銘柄や投資タイミングを選定する楽しみ

 株式投資を続けていくと、政治・経済・社会の動きや趨勢(人口、エネルギー、気候、為替等)と企業(業種や経営方針、活動地域含む)の関係も気になってきて、将来の変化を想定しながら銘柄や投資のタイミングを選定することも楽しみになってきます。勿論、推定が外れて業績が悪化して株価が下落、自分の資産価値が減ってしまうこともありますが、株式が基調的に右肩上がりだとすれば、中長期的に資産価値を毀損する懸念はあまり大きくないと考えています。

 それでは、現状はどう考えるべきでしょうか?コロナや米国の急速な金融引締め見通し等で軟調な地合が続いていたところに、ロシアのウクライナ侵攻問題で2月下旬から更なる下落局面となりましたが、3月上旬に底を打った形で上昇に転じています(図1参照)。日本の場合、急速な円安が平均的には企業業績にプラスという判断に加えて、ウクライナ侵攻から1ヶ月以上が経過して地政学リスクとしての不透明感が薄れてきたのかも知れません。しかし、特にウクライナ侵攻問題については、最悪の事態の可能性は残されており、安易に楽観論に傾くのは時期尚早と考えています。少なくとも、世界の経済分断の悪影響は長期に及ぶ可能性があり、ロシアは勿論として、他の国民の生活にもボディーブローのように痛みが続く可能性があります。資源、食料、素材の高騰が特に資源を持たない日本の経済には大きく影響し、景気低迷が短期では収まらないということも考えておくべきでしょう。杞憂に終わって景気も持ち戻し、企業業績も順調に拡大していく可能性もありますが、株式投資は最悪のケースも想定して臨むことが必要と思います。

 かのウォーレン・バフェット氏も、株式運用の要諦は儲けることより「損をしないこと」で、最悪のケースを過小評価しないことが重要と言っています。この観点では、現状は株式投資資金の半分程度は現預金で保有して今後の下落に備えるのがバランスの良い方策かと考えています。勿論、すでに述べたとおり、長期視点では株式は右肩上がりとなる可能性が高いですから、投資信託等で長期・分散・積立投資を続けられている方は安易に中断せず継続をお勧めしますし、個別株投資でも10年以上のスパンで現金化する必要の無い方は、下がりすぎていると思われる魅力株で資源、素材高への抵抗力ありそうな銘柄を少しずつ拾っていくのは良いと思います。

 現在、日本株のPER*は全体的には割高では無いように見えますが、PERの計算要素である「利益」は予想利益であり、新年度に入ると2022年度の期末予想に切り替わっていきます。この利益予想が徐々に下振れしていって、現在の株価水準が割高になっていく可能性には注意が必要です。

*PERについては次の項で解説します

 

 

◆ PERとは

 PER(株価収益率)は、株価が1株当たり純利益の何倍に相当しているかを見る指標で、現在の株価が対象企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する指標として使われています。平均的には15倍程度が標準とされていますが、対象企業の収益力や業態によっても一概に言えませんので、安易に15倍割れなら割安、15倍超えなら割高と判断するのは適切ではありません。

 単純に15倍基準で判断すべきでない理由で特に重要なのは、通常「純利益」は年度末の予想利益を使っている点です。具体的には決算発表日の翌日から新しい期の予想利益に切り替わります。つまり、該当期の利益はその時点では確定していないため変動することが多いことと、たまたま特別な事情で該当期の利益が嵩上げされることもその逆もあるということです。

 また、株価には該当期の利益のみが反映されているわけでは無く、その後の利益の推移予想も反映されるため、利益の成長が続くと見込まれる企業の株価は該当期の利益との比較では割高になり、PERも大きくなるのが通常です。よく、米国株に比べてPERで見ると日本株は割安、という論が見受けられますが、日本株の方が平均的に成長力が劣っていると看做されれば、必然的に日本株のPERの方が割安になる訳です。つまり、PER値を介して、その時点の投資家の長期的利益見通しの総意が株価に反映していることになりますので、自分なりの経済・金融、そして企業の価値分析に基づいて現在の株価の割安・割高を評価して売買銘柄を選択することが株式投資の妙味となります。

 

 ◆ まとめ

 長期視点に立てば株式投資は魅力的で、成長力の高そうな銘柄を下落時に拾って分散投資していけば資産形成に寄与する可能性が高いと考えています。また、社会状況を見極めながら投資対象銘柄を選定していくことも、社会への関心を繋ぎながら頭を働かせるという観点で人生の楽しみの一つになると思います。ただ個人的には現状のリスクを過小評価しない方が良いと考えていますので、しばらくは現金比率を上げておく判断もありと思っています。

 勿論、ここで述べた見解は個人的なもので、考え方、見方は人それぞれです。投資は自己責任ですので、皆様の頭で良く考え、判断ください。なお、少しでも損をすると、気になって夜も眠れない、という方には株式投資はお勧めしません

 

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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   鈴木康文 CFP®

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とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

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