2022年3月15日 「老後」は何歳からはじまる? ~年金繰り下げ受給が75歳まで拡大~

  

「老後」とは何歳からはじまるのでしょう?厚生労働省の2020年の「高齢期における社会保障における意識調査結果」では、「何歳から老後と考えるか」という問いに対して、「70歳から」と答えた方が最も多くなっています。

年金制度改正法により、2022年4月以降、老齢年金の繰り下げ請求の上限が現在の70歳から75歳に拡大され、75歳まで繰り下げをすると年金額は最大84%の増額となります。

豊かな老後を送るために必要不可欠な年金、そして気になるその受給金額。受給年齢が75歳まで拡大される年金繰り下げ受給について解説します。

 

◆ 「2階建て」公的年金制度 

 日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳まですべての人が加入する年金で、一方の厚生年金は、会社員や公務員として働く人が加入する年金です。国民年金に上乗せする形で厚生年金があるため、日本の公的年金制度は「2階建て」と言われています。

 国民年金・厚生年金に加入(保険料を納入)し、所定の条件を満たせば、老齢年金は原則65歳以降に年金を受取ることができ、障害年金は病気やケガで障害状態になったとき、遺族年金は亡くなったときに年金を受取ることができます。

 

◆ 老齢年金の受給開始時期・受給額

 先ほど老齢年金は原則65歳以降に年金を受取ることができると記載しましたが、年金を受取る時期(=受給開始時期)は、60歳から70歳の間で選択することが可能です。毎月の年金額は65歳から受取る場合と比べて、65歳より前に受取れば(=年金繰り上げ受給)減額され、65歳より後に受取れば(=年金繰り下げ受給)増額されます。

受給開始時期を60歳に繰り上げた場合65歳の受給額と比べ30%減額、70歳まで繰り下げた場合42%増額になります。

 また、2022年4月には年金繰り下げ受給を選べる年齢の上限が70歳から75歳に 引き上げられ、75歳まで繰り下げると84%の増額になります。

 受給開始時期は1ヵ月単位で選択することができ、繰り上げの場合は1ヵ月0.5%の減額(令和4年4月から0.4%)、繰り下げの場合は1ヵ月0.7%の増額になります。

 

◆ 繰下げのデメリットにも注意

 75歳まで繰り下げると、毎年の年金額は1.84倍になりますが、繰り下げている65歳から74歳の10年間は、当然ですが年金は支給されません。例えば65歳の年金額が200万円のかたの場合、10年間で合計2000万円を受け取る事ができません。 

 また、配偶者が65歳になるまで支給される加給年金(注1)約39万円/年が、厚生年金を繰り下げている間は支給停止となります。

(注1)加給年金は家族手当のようなもので、配偶者が年金を受け取れる65歳になるまで、本人の厚生年金にプラスして支給される年金です。

 

 年金額が増えると、それに伴い所得税や住民税、国民健康保険料が増えます。また、年金額が増えると医療費の窓口負担が2割(注2)、3割に増える場合があります。さらに、遺族年金は増えないことにも注意が必要です。

 (注2)2021年6月4日に75歳以上の医療費の負担割合を、単身者は年収200万円以上、夫婦とも75歳以上の場合は320万円以上を、2割に引き上げる法案が可決されました。

 

◆ 「豊かな老後」 必要金額と不足金額

 生命保険文化センターの生活保障に関する調査によると、「豊かな老後」を送るために必要な生活費の目安は平均約36万円です。また、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、高齢者1世帯あたりの65歳から受給開始の公的年金受給額は平均約26万円(平均的サラーリマンの参考額)です。

 

※受給開始時期・受給増減率・受給額・「豊かな老後」不足額 

 

◆ まとめ

 「老後」の開始時期は、年齢だけではなく、本人および家族の健康・お金などから、人それぞれの状況により、その時期が変わると言えるでしょう。「豊かな老後」を送るためには、現在の家計状況、公的年金受給金額の把握したうえで、老後の必要金額を算出し、今からどのように備えるかを検討することが大切です。

 「豊かな老後」を送るために、どう対応すべきか悩ましい時は、是非我々ファイナンシャル・プランナーにご相談ください。

 

 

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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   左右木 伸也  AFP

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