2021年10月1日 『生産緑地制度』の2022年問題を解説する!

 

 『生産緑地』指定期限が終了してしまうという、土地の2022年問題をご存じでしょうか。私たちの暮らしに大きな影響を与える土地問題のことをいいます。

 

◆ そもそもの問題はなに?

 生産緑地制度の歴史は、昭和43年の都市計画法制定による線引き制度で、市街化区域内市街化調整区域内、未線引区域と、法律上は区域分けされ、もともと市街地に存在していた農地が「市街地農地」として発生したことに始まります。つまり、区域分けによって、今まで農業を営んでいた区域は、突然、住宅をどんどん建てられる地域になってしまい、その区域内の農地が特別に課税される対象の土地にされてしまった訳です。

 しかし、市街地内の農地という用途が異なる土地のため、その後の幾度となる税制改正により、「宅地なみ課税制度」や、「相続税納税猶予制度」、また、「長期営農継続農地制度』など、国もその都度施策を打ち出しましたが、定着しませんでした。

 

◆ 生産緑地制度が終わる!?

 平成4年に現在の生産緑地制度が施行されました。制度の大きな目的のひとつが、「保全すべき農地を30年間農地として指定する。」ということでした。

つまり、市街地区域にある農地を、宅地にするか農地継続するかを地主に選択させて、農地として継続するのであれば、30年間税制優遇期間を与えるという生産緑地制度であり、その30年の期限は、令和4年(2022年)12月31日をもって終了してしまうのです。

 

◆ たび重なる施策失敗!?

  税制優遇や納税猶予の終了により、新たな土地問題が発生しかねません。そこで、平成29年に生産緑地法が改正されました。またまた施策内容は修正されたのです。

修正の内容は、「特定生産緑地の指定」を受けることによって、これまでと同様に生産緑地制度の義務と優遇措置をそのまま10年間延長できるという点です。

 同時に指定面積基準の緩和や特定施設建設を可能にするなどの制度改正、また、「都市農地賃借法」の成立により、市町村長の許可を受けることで、耕作事業計画に基づき相続税納税猶予を受けたままで農地を貸すことができることになりました。更に、賃貸借契約期間後に農地が返還されることも、土地所有者には安心して土地を貸せる要素にはなります。 

 

◆ 根本的な課題は解決しない

 生産緑地指定期限の延期や条件緩和によって、一時的に、農地を持つ地主が重い納税を回避できたかもしれません。ただ、また次の期限がくれば、納税するために土地を安価で売る決断を迫られるという、問題の先送りとも言えます。

 結局、税制優遇を受けられる生産緑地の指定を続けていいけるか否かという判断基準は、農業経営を続けるという点が事実上の判断基準になるといえるでしょう。

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   AFP 志村孝次  

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