2021年5月1日 事例で学べ、確定拠出年金を活用した老後資金作り

 

 皆さん、確定拠出年金は活用していますか?老後の資金作りや家計の資産形成には頼りになる味方ですね。「名前は聞いたことがある」、「制度もおよそ知っている」、「でも実際にどう活用したらよいのか分からない」、という方も多いのではないでしょうか。制度の詳細な説明は別の機会に譲り、ここではこの制度のより効果的な活用方法について、著者の体験も交えて紹介します。

 

 

1.確定拠出年金制度の概要と活用のポイント

 確定拠出年金(以下「DC」)は、企業型DCと個人型DC(iDeCo)がありますが、共通する大きなメリットが税制面です。拠出時と運用時は非課税となり、給付時も年金受取なら「公的年金控除」の対象、一時金受取なら「退職所得控除」の対象となります。

 実際の運用に当たっては、出来るだけリターン(=運用収益)が大きく、リスク(=運用成績のブレ)が小さい商品を選ぶべきですが、運用成績を決める要因の90%がアセットアロケーション(=資産配分)にあり、個別商品選択の要因は小さいと言われています。このため、以下の事例でもアセットアロケーションを重点に説明します。

 

2.確定拠出年金制度の活用

 これよりDC制度活用の実際について、著者の事例に沿って説明します。具体的には、以下のStep①~Step④の順で進めました。

 

Step① 投資経験なしで確定拠出年金を始めました(2003年~)

 勤務先のDC制度導入を機に、著者も企業型DCに加入しました。当時は投資も資産運用も全くの初心者だったため、配布されたパンフレットを頼りに以下のアセットアロケーション(AA①)を組み、積立投資を始めました。

アセットアロケーションAA①)

保有比率

元本確保型(定期預金、生命保険)

60

バランス型投資信託(安定成長型)

20

先進国株式インデックスファンド

20


Step② 少しは金融知識がついてきた、もっとうまく運用したい

 その後、運用自体は順調でも金融知識に不安があったため、資産運用の基礎講座を受講。学んだ知識を活かして、まずは最もオーソドックスな構成(AA②)に変更しました。

アセットアロケーション(AA②)

保有比率

国内株式インデックスファンド

25

先進国株式インデックスファンド

25

国内債券インデックスファンド

25

先進国債券インデックスファンド

25

  このAA②構成で当初は順調でしたが、リーマンショック(2008年)等による株価暴落や円高(=外貨資産の目減り)等により、一時は資産残高が累計拠出額の半分近くまで減少しました。この時はもう運用は止めようかとも思いましたが、資産運用講座で学んだ景気循環や積立投資の話を思い出し、思いとどまりました。

 その後は運用を続けながら景気回復を待つと共に、徐々に回復の遅い国内株式を売却し、好調な「先進国株式」の比率を高めて、最終的に以下のAA③の構成としました。

アセットアロケーション(AA③

保有比率

国内株式インデックスファンド

0

先進国株式インデックスファンド

70

国内債券インデックスファンド

10

先進国債券インデックスファンド

20

  上記構成で運用を続けることで、2012年末には漸く含み損が解消し、その後はアベノミクス相場やトランプラリー相場などの恩恵も受け、順調に含み益を増やしました。

 

Step③ 受給可能な年齢になった、すぐ受け取るべきか、もう少し待つべきか

 受給可能な年齢(現行60歳)になると、直ぐ受給するか、受給時期を繰り下げるかを選ぶ必要があります。ここではAA③の運用が順調だったため、同条件で「運用のみ継続」を選択しました。

 

Step④受給を始めたいが、どう受け取れば有利か(出口戦略)

 Step③「運用のみ継続」で所定の運用目標を達成した後は「運用しながら年金受給」を開始しました。同時に従来の株式偏重のAA③から、安全性(低リスク化)も重視したAA④に切り替えました。

アセットアロケーション(AA④

保有比率

先進国株式インデックスファンド

35

国内債券インデックスファンド

15

先進国債券インデックスファンド

15

新興国債券インデックスファンド

20

J-REITファンド

5

金ファンド

10

  このAA④構成は、マイ・インデックス(myINDEX)という資産配分ツールを用い、リスク/リターンの最適化シミュレーションを行った上で設定しました。本稿で紹介した一連のアセットアロケーション(AA②~AA④)について、このツールでの評価結果を下表に示します。この中ではAA④が最も有利な構成であることが分かります。

 

アセットアロケーション

平均リターン

リスク

AA

4.8

9.9

AA

6.4

14.5

AA

6.7

10.6

 参照:myINDEX https://myindex.jp/user/myaa.php

 

この評価結果は、あくまでも過去20年間実績(上表は2001年3月末~2021年3月末)からの試算であり、この数字通りになる保証はありませんが、目安としては有用です。なお、「運用しながら年金受給」を開始して約1年半経過しましたが、コロナショックも乗り越えて現時点では順調です。

 

3.まとめ

  以上、DCを活用した資産作りの実際について事例も含めて説明いたしました。ここでDC制度活用のポイントをまとめておきます。ご参考になれば幸いです。

  • ある程度の金融知識は必要(いざという時役立ちます)
  • 運用は長期に亘り継続することが重要(できれば20年以上)
  • 単なる積立投資ではなく、アセットアロケーション等の工夫で運用成績の向上が期待できる
  • 資産運用は増やし方だけでなく、受け取り方(出口戦略)も重要

なお、本稿の内容はあくまで個人的な見解や、その説明の為の事例です。手法を勧めるものでも結果を保証するものでもありません。実施の際はご自身で判断頂ければ幸いです。

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   三好 正信 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

【免責事項】
 かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。