2021年1月17日  認知症対策と任意後見制度の活用

 

 厚生労働省の推計によると2020年には認知症患者数が602万人に達しており(厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」2019年)、高齢化が進む中で認知症がより身近になってきました。今回は、まず認知症の現状と予防について確認したうえで、その対策の一つとなる任意後見制度についてみていきましょう。

 

1.認知症の種類と特徴 

 認知症とは、様々な原因で脳の神経細胞がダメージを受けることにより判断能力が低下する病状です。この認知症の中で特に多いのは以下の4種類です。

①アルツハイマー型認知症

 アミロイドβ蛋白が脳に蓄積して神経細胞に障害が発生することで記憶障害や見当識障害(時間や場所が分からなくなる)が起こり、猜疑心が強まったり徘徊、興奮や暴力等の周辺症状が現れたりする。認知症の半分以上がアルツハイマー型。

②脳血管性認知症

 脳出血、脳梗塞等により感情のコントロール減退や麻痺が発生する。

③レビー小体型認知症

 脳神経細胞内にレビー小体が発生することで、うつ症状や体のこわばり、睡眠時の異常行動等が生じるほか、幻視が特徴。

④前頭側頭型認知症(ピック病)

 脳の前頭葉、側頭葉が変性することにより他人への配慮が失われる、万引きする等の症状が起こる。若年層にも現れ、記憶障害は比較的軽度。 

(出典:政府広報オンライン)

 

2.認知症の診断と治療

 認知症は、問診、長谷川式スケールやミニメンタルステート(MMS)テスト、脳のCTやSPECT(血流検査)により総合的に判断します。また、治療薬としては、アリセプト、レミニール、メマリー、イクセロンパッチ等が用いられますが、まだ機能低下の進行を抑制する程度の効果です。ただし、MCI(初期症状)での治療開始の場合は期待が持てます。

 

3.認知症の予防と相談先

 WHOは以下の対策を呼びかけています。

 ①生活習慣の改善(運動、禁煙、健康な食生活、節酒)

②心身の管理(体重、高血圧、高血糖、脂質異常、うつ病、聴力)

③その他(知的、社会的活動)

聴力の低下により発語が減って自分の殻に閉じこもりがちになることで、社会的活動の減少やうつ症状が進む点には注意が必要ですね。

 家族がまず相談する際は、地域包括支援センターや市町村の福祉関係窓口が適切です。また、(公社)日本老年精神医学会HP(http://www.rounen.org/)では専門医や認知症を診断できる病院等を検索できるので、早めの受診が重要です。

 

4.任意後見制度の活用による対策

 任意後見制度とは、本人に判断力があるうちに、「判断力が低下した際に、自分に代わって預金管理、不動産管理~役所や病院・施設への手続き等をしてくれる代理人」をあらかじめ決めておく制度で、本人と任意後見受任者が公正証書で「任意後見契約」を締結しておきます。そして、判断力が低下した時点で任意後見受任者や家族が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立を行い、その選任後は任意後見人が行う後見処理を任意後見監督人が監督していきます。

 また、法定後見制度では、申立時に指定した「後見人候補者」を家庭裁判所が選任しない場合があるほか、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要になりますが、任意後見制度はこれらの点で使い勝手がよいとされています。ただし、任意後見人は本人の行った行為の取消権がないので、詐欺被害には注意が必要です。

 

 なお、(一社)かながわFP生活相談センターでは、認知症や成年後見制度についてのご相談をお受けしています。

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   小林 徹 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

  

 

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