2020年10月15日  これで安心!? 法務局における「遺言書の保管制度」の開始

 

 約40年ぶりの民法(相続法)の改正とあわせて、令和2年7月10日より「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が制定されました。この制度により、自筆証書遺言を法務局にて保管することができるようになりました。その特長や留意点などについてみていきましょう。

 

◆自筆証書遺言の保管制度の主な特長・手続

 自筆証書遺言は、いつでも気軽に作成することができる反面、遺言者が自由に保管場所を選べるため、保管場所を忘れたり、紛失したりしてしまうことがあります。また、相続開始後に、遺言者の親族が遺言を見つけ、都合の良い内容に改ざんされてしまう恐れもあります。
 自筆証書遺言の保管制度を利用することにより、これらの問題を解決することができ、遺言者は安心して意思を相続人等に伝えることができます。

 

<<主なメリット>>
1.紛失や改ざんなどの心配がない
 保管場所が法務局であるため、安心して保管することができます。相続開始までは遺言者以外の人が閲覧することはできません。

 

2.発見されない心配がない
 保管している旨を相続人等に伝えておくことで、遺言書があることを知らなかった、発見されなかったというような事態を防ぐことができます。また、遺言者が亡くなった際に、遺言者があらかじめ指定した推定相続人(相続が開始した場合に相続人となる人)等に対し、遺言書保管所(法務局)から遺言の存在を通知する制度も令和3年度以降頃から開始される予定です。

 

3.家庭裁判所での検認が不要
 自筆証書遺言については、相続開始後に家庭裁判所での検認(確認・記録する行為)が必要となりますが、法務局で保管される自筆証書遺言については検認が不要となるため、相続人等の負担が軽減されます。


<<主な手続>>

1.遺言者本人のみの手続(相続開始前)

2.相続人等の手続(相続開始後)

手続き

費用

手続き

費用

①遺言書を預ける

1通3,900

①遺言書が預けられているか確認する

1通800

②預けた遺言書を閲覧する

1回1,400

(原本1,700円)

②遺言書の内容の証明書を取得する

1通1,400

③預けた遺言書を撤回する

なし

③遺言書を閲覧する

1回1,400

(原本1,700円)

 

1.遺言者本人のみの手続(相続開始前)
①遺言書を預ける:1通3,900円 
 遺言者の住所地や本籍地等の遺言書保管所に預けることができます。その際、遺言書をホッチキス止めしてはならず、封筒に入れる必要はありません。
②預けた遺言書を閲覧する:1回1,400円(原本1,700円)
 モニターによる遺言書の画像の閲覧や、原本の閲覧ができます。モニターによる閲覧は全国のどこの遺言書保管所でもかまいませんが、原本の閲覧はそれが保管されている遺言書保管所のみで可能です。
③預けた遺言書を撤回する:費用なし
 預けた遺言書を破棄したり作り直したりしたいときなどに、遺言書の返却を受けることができます。その手続きは原本を預けた遺言書保管所のみで可能です。

 

2.相続人等の手続(相続開始後)
①遺言書が預けられているか確認する:1通800円
 遺言書が保管されているか否かの証明書(遺言書保管事実証明書)を取得することができます。全国のどこの遺言書保管所でもかまいません。
②遺言書の内容の証明書を取得する:1通1,400円
 遺言書情報証明書を取得することができます。この証明書は、登記や各種手続きに利用することができます。証明書が発行されると、その他の相続人等にも遺言書が保管されている旨の通知がされます。
③遺言書を閲覧する:1回1,400円(原本1,700円)
 モニターによる遺言書の画像の閲覧や、原本の閲覧ができます。モニターによる閲覧は全国のどこの遺言書保管所でもかまいませんが、原本の閲覧はそれが保管されている遺言書保管所のみで可能です。
(出所:法務省ホームページをもとに作成) 

 

◆自筆証書遺言の保管制度の留意点

 保管制度の対象となるのは、A4サイズの用紙に指定された余白を設けて書かれていること、「令和2年7月10日」のように特定できる日付を自書していることなど、法務省が定める様式にしたがって作成された自筆証書遺言のみです。様式の詳細については、法務省の公式ホームページ(http://www.moj.go.jp/index.html)や法務局等で事前に確認しましょう。また、自筆証書遺言は財産目録を除きすべてを自書して作成しなければならないため、すべてをパソコンで作成した場合には保管制度の対象外となるだけでなく、遺言書も無効となります。

 なお、法務局はあくまでも保管に関する業務を担うだけであり、たとえば自筆証書遺言の内容に関する相談には応じない点や、遺言書の有効性について保証しない点にも注意が必要です。

 遺言は、遺言者の意思を伝えるだけではなく、相続の揉め事を防ぐためにも有用な手段といえます。せっかく作成した自筆証書遺言が内容の不備などにより無効とならないよう、その内容については、事前に専門家であるKFSCにご相談ください。

 

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   左右木 伸也  AFP

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