2020年5月16日 コロナ危機で資産運用はどうすべきか

 

 本原稿執筆時現在(4/30)、残念ながら日本ではまだ新型コロナウィルスの終息は見えていません。被害に遭われた方やその関係者の方もおられると思います。実際にこの原稿が掲載される頃には少しでも改善に向かっていることを願っています。コロナ禍に直面されている方には申し訳ありませんが、一方で、資産運用の途上で今回のコロナ危機による株式等金融商品の暴落に直面して悩んでいる方もおられると思いますので、今回は、このような暴落に際して資産運用面でどう対処したら良いかについて、一緒に考えてみたいと思います。なお、コロナ危機による巣ごもり状況で収入が大きく減り資金不足という方は、この後の説明にかかわらず、手元資金(預貯金又は現金)確保を第一にお考えください。

 

◆「明けない夜はない」
 様々な危機によって金融商品の暴落に遭遇したとき、皆さんはどう対処されるでしょうか?慌てて株式等から撤退し、やはり預貯金が1番と考えられる方、ただただ困惑して動きを止めてしまわれる方、・・・こういった方々が案外多いのではないでしょうか。ただ、その前提として考えた方が良いのは「明けない夜はない」ということです。しかし、夜がいつ明けるのかは、なかなか事前に判断できないものです。ちょっと話題を切り替えます。
 上田秋成の雨月物語の一編に「吉備津の釜」という物語がありますが、読まれた方はおられるでしょうか? 浮気者の男が妻の怨霊に呪い殺されるというストーリーで、雨月物語の中でも最も怖い一編と言われています。怨霊を恐れた男は祈禱師を頼んで家のすべての出入り口に護符を張って貰い、42日間こもっていれば、怨霊の呪いは消え去ると言われます。ひたすら42日間が終わるのを待ち続け、やっと42日目の夜が過ぎようとして、東の空が白々とし出して、夜明けを知らせる隣人の声も聞こえて、男が外に出てみると。・・・鋭い悲鳴に驚いた隣人が外に出てみると、明け放れた男の家の戸の所にべったりと赤い血だけが残っていて、男はいなくなっていたのです。外はまだ真っ暗で、男にとって白々としたかに見えた東の空も、隣人の声も怨霊の仕業だった訳です。夜明けを誤解した男の悲劇とも言えるわけですね(そこに本質がある訳ではないですが)。私がこの本を読んだのはまだ小学生の時ですが、当時読んだ ほとんどの本の記憶は失われているのに、この本の記憶はまだ鮮明に残っています。今日まで続く、私の女性恐怖症の発端となった作品という訳です(^0^)。

 

◆コロナ危機 

 話題を元に戻します。「明けない夜はない」のですが、それがいつなのかは見極めが難しいと言うことです。イギリスのブレグジットが国民投票で決まった時や大統領選でトランプ大統領の勝利が決まった時等は、一時的に株式の大きな下落はあったものの、あっという間に回復しました。分りやすいV字回復です。でも、リーマンショックの時は、いったん夜が明けたと思ってもまた大きく下落ということを繰り返して、完全な回復が始まるまでに2年ほど掛かりました。 

 今回のコロナ危機では、日経平均の変動を見ると2月後半から3月下旬までに大きく下げ、その後若干回復していますが、大きな暴落の後のこれからの見極めは難しいものです。色々な専門家の予想はあっても、究極の所は「神のみぞ知る」です。新型コロナウィルスの終息の目処が立たないと、先が読めないわけです。もし終息の目処が早めに見えれば、株価は先行して動きますので、後から振り返ったら3月が底でこの後大きく切り上がった、ということもあり得ます。しかし終息が長期化すると、原油価格の暴落のように、様々な分野への経済的な痛みが波及して、業績や純資産が大きく毀損する企業や個人事業主などが急増し、政府や中央銀行の対応も難しいものとなって、株価の再暴落も十分あり得ます。

 

◆現況下の資産運用

 現況で先行きを判断するのは難しいのですが、短期的な終息は残念ながら可能性が低いように思われます。そうすると、個別株式投資をされている方は、一時の急落からの回復に夜が明けたと拙速に判断せず、もう少し状況の推移を確認した方が得策かも知れません。巣ごもり需要の恩恵を受ける一部の企業を除くと、今後の企業業績への悪影響がまだ株価に十分織り込まれていない懸念があるからです。ただ、お金に余裕があって、中長期的視野で資産運用ができるという方は、企業業績への影響を確認しながら、コロナ終息後に成長が見込める企業の株式に少しずつ買いを入れていくと、いずれ回復した時には資産価値を大きく上げている可能性が十分にあります。ただし、一時に大量の資金を投入するのは、将来が見えない以上、博打の領域に入りますので、避けた方が良いと思います。


 ●暴落時に株式を慌てて手放して完全撤退されるという方が現実にはかなり多いのですが、経験則的には、その後の回復期の株式上昇の恩恵を得られずに損を確定しただけに終わりがちです。一方、株で一財産築いた人の多くは、株価が暴落して多くの投資者が身をすくめているときに果敢に安値で仕入れることによって資産を増やしたという方が多いのです。ただ個別株式投資は企業価値やタイミングの判断はなかなか難しいものです(そこが魅力でもある訳ですが)。


 ●忙しい方にとって1番無難なのは、iDeCoや、つみたてNISAのような非課税(又は節税)制度を活用して、国内外の株式を主対象とした手数料の安価な投資信託に長期・分散・積立投資を粛々と続けることです。コロナ危機の長期化で短期的には損を拡大させる可能性は勿論否定できませんが、安値で多くを仕込むことになりますので、その後の回復を信じられるなら、中長期的には資産形成に大きく寄与する可能性が高いと言えます。

 

 ●過去の株価変動等を踏まえると、外国株により大きな比重を掛けた方が良い成果が得られるかも知れません。債券は最近の低金利状況では魅力が少なく、更に、今後金利が上昇すると債券価値は下がりますので(固定金利の債券の場合)、現況ではあまりお勧めできません。ただし、投資に「絶対」はありません。皆様方ご自身でよく考え判断されて、自己責任で行動してください。また本稿は執筆者の認識を記したものでKFSCの総意ではないことはお断りしておきます。

 

◆最後に
  最後になりますが、しばらくは人との物理的接触は可能な限り控え、ご自愛ください。一方で精神的痛みの軽減も重要です。ネット等による論理的接触(つながり)が、対象は限定的とは言え可能な時代です。十分活用ください。また、コロナ後は生活様式も企業のビジネス様式もこれまでとは変容する可能性が高そうです。将来を考えながら想像力を鍛えるのも良いかも知れません。

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  鈴木康文 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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