2019年10月13日 人生100年時代。老後資金が不足する以外の「怖いこと」とは

 

 「人生100年時代」という言葉。いろいろなところで言われていますから、いまさらという感じかもしれません。

長生きをするなら、まずはお金を貯めなきゃということを思った方も多いでしょう。そこで、目標となるのが2000万円。

ただ、この金額が貯まれば、長い人生安泰かというと、絶対安心とは言えません。

今回、老後資金が不足する以外の長寿のリスクについても考えてみたいと思います。

 

◆老後資金の不足2000万円についておさらい
 最初にまず知っておいていただきたいのは、誰もが老後に2000万円が不足するわけではありません。

不足するのは、モデルケースとして提示された、高齢の夫婦二人くらしの世帯の場合です。

ですから、ずっと国民年金のご夫婦や、お二人ともが厚生年金のご夫婦の場合では、不足額ももちろん異なりますし、また単身者でも金額は異なります。

 いずれにしても、ご自分の年金加入歴を調べていただき、ライフプランを立て、その不足額を「自分はどうなのか」を考えておかないと、2000万円という数字は誰にでも当てはまる数字ではないのです。

 

◆老後資金が不足する以外のリスク
 年金だけでは老後資金がまかなえないというのは、むしろ常識となりつつあります。

特に若い世代になればなるほど、「年金は当てにならない」という意識から、仮想通貨や積み立てNISAなど、自分たちでできる自助努力へと踏み出しています。

ただ、今回、その自助努力だけでは対処できないリスクを自覚させるニュースが流れました。

2019年8月9日、最高裁判所で、「親の親族の債務が認知後3か月は相続の放棄をすればよい」という初判断を示したのです。

今回、相続できるかどうかを争っていたのは、父親の兄の相続でした。つまり裁判を起こした女性からすれば伯父ですが、この伯父が死亡し、相続が発生したものの、放棄できるかどうかの期限である熟慮期間3か月の期間内に、父まで死亡していたという事案です。

普通であれば何も問題はないですが、この伯父には借金があったため、「放棄できるかどうか」という点が最大のポイントとなったのです。

 

◆親族の相続、何が問題?
 この女性が伯父の死亡を知ったのは、強制執行の通知を受けたからです。親族が疎遠で、どこにいるのか、何をしているのか、はっきりとわからない方も多いでしょう。

借金がある相続であれば、「放棄すればいい」と簡単にいう方も多いのですが、相続の際の放棄は、単に「放棄しない」と親族に伝えればいいわけではありません。家庭裁判所に申述するという手続きが必要となるのです。

(詳細については以下参照http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)

 もし、相続の放棄をするための起算点が、債権回収業者の主張する「父親の死亡時」ということであれば、この女性は、親しくもない伯父の債務を引き受けざるを得なかったでしょう。

 

 今回の最高裁の判断で、疎遠な親族の債務の再転相続人(注1)になった時、相続放棄が認められる余地が広がったと喜ぶ方は多かったのです。「自分のために相続を知った時」が起算点ということで、逆に言うと、「知った時には」3か月以内にちゃんと相続放棄の手続きを取らないと、ほとんど知らないような親族の債務を引き受けるというリスクも明らかにしたのです。一人暮らしの高齢者はじわじわと増え続けています。(出所:内閣府高齢者白書)
 せっかく老後資金を貯めたのに、自分以外の借金を背負うと大変です。老後にはこんなリスクもあるのです。注意したいものです。

 

 

<注:再転相続とは>
親族の相続が発生して、相続人が相続の承認、もしくは放棄のどちらを選択するかの熟慮期間中に、その相続人が死亡し、2回目の相続が発生すること

 

 

 

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  當舎 緑 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

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