2019年4月14日  年金額を増やす方法 ~年金の繰上げ・繰下げを考える~

 

受給が始まると一生涯もらえて、シニアの生活の大きな資金源となるのが老齢年金(基礎(国民)年金+厚生年金;以下、単に「年金」)ですね。一生のつきあいなら、少しでも多くもらいたいですよね?今回は年金の繰上げ・繰下げについて考えてみたいと思います(一定以上の年齢の方が65歳以前に受給できる、所謂「特別支給の老齢厚生年金」は今回のお話しの対象外です)。

 

現状、年金は原則65歳に受給開始となりますが、開始年齢を60歳まで繰上げることも、逆に70歳まで繰り下げることもできるのです(原則1ヶ月単位に繰上げ・繰下げ可;ただし繰下げは66歳以降)。繰上げれば、早く年金がもらえるようになるため、生涯の受給期間は長くなりますが、その分、毎年の年金額は少なくなります。逆に、繰下げれば、生涯の受給期間は短くなりますが、毎年の年金額は増えます。繰上げると0.5/月のペースで減額されますので、60歳まで繰上げると0.5%×12ヶ月×5年で30%減額されます。繰下げると0.7/月のペースで増額されますので、70歳まで繰下げると0.7%×12ヶ月×5年で42%増額されます。単純計算だと、77歳より前に死ぬなら60歳繰上げが有利になり(年金受給総額が多くなる)、82歳以上生きるなら70歳まで繰下げて受給するのが有利になります。

 

 

 

でも、自分の余命って、通常は分からないですよね?ですから、もし長生きできた時に資金が枯渇するリスクを回避するために「繰下げ」を検討するのは「アリ」だと思います。一方、繰上げは、当初は良くても長生きできたときに資金不足がボディーブローのように効いてくる懸念があります。繰上げは1度実行すると少ない金額を一生貰い続ける選択肢しかないのです。繰上げは他にも色々デメリットがあり、基本的にはお勧めできません。これに対して繰下げは、基礎年金と厚生年金を独立に行うことができ(ご夫婦の場合、最高4つについて独立に選択可)、しかも、65歳時点で時期を特定する必要は無く、自分の状況に合わせて繰下げ時期を決定できる上、70歳までなら、65歳に遡って一括して貰うこともできるので、もしもの資金枯渇にも柔軟に対応できるのです。

 

尤も、繰下げについても、次のような点には留意が必要です。

  • 繰下げ中の期間に家計が破綻しないよう、予めの対策は必要
  • 「加給年金」などいわば年金の扶養手当がもらえるケースではその支給が停止になることがある
  • 年金額が増えると、通常、税金や社会保険料も増える、最近話題の「年金生活者支援給付金」の対象からはずれる、等、トータルではメリットの一部が相殺されることがある
  • 年金額は、受給世代の増加、生産年齢人口の減少を加味して少しずつではあるが相対的に(物価比で)減額されていくため、繰下げによる目減りも発生する

 人生100年時代、元気なうちは働いて収入も得、年金に頼る時期を遅らせる、というスタンスが基本的には良いように思いますが、でも、自分の人生ですので、自分の人生観にあった生き方をすることが大切です。そのために、年金を含めてどう対応すべきか悩ましい時は、我々ファイナンシャル・プランナーをご活用ください。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  鈴木 康文 CFP(R) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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