2019年1月17日 消費税増税前の不動産購入は、本当に有利でしょうか?

 

 

 2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げに伴い、不動産業界では8%の税率が適用される19年3月末までの売買契約書等の締結-戸建て・マンションの分譲や建築-に向けて、広告宣伝活動が活発化しています。

一見、消費税率が低いうちに購入等を決めた方が“お買得”と思えますが、本当にそうでしょうか?

 

◆近年の国内不動産市場の動向
 2018年12月に国土交通省が発表した「不動産市場動向マンスリーレポート」にある「不動産価格指数(住宅):南関東圏」を見ると、「住宅総合」に関して2013年1月の価格指数100近辺を底に、時間的経過に連れて右肩上がりの上昇を続け、2017年8月には115前後に達しているものの、2018年1月以降は横這い状態になっています。(図1、緑の線)
 また、同レポートに引用されている「中古マンション:首都圏・東京都-成約価格と㎡単価の推移」では、同エリアの中古マンション売買価格(総額と㎡単価)の2014年1月~2018年10月までのトレンドが示されていますが、これについてもグラフは右肩上がりながら、2018年以降は横這いもしくは若干の下落傾向が見て取れます(図2)。

これらのデータからは、安倍政権誕生後(2012年11月)の超金融緩和政策等による景気回復を背景に、資産価格-特に不動産価格が上昇しており、それが昨年頃からそろそろ天井を迎えつつある、と読めます。
 (図1)

 

 

(図2) 

 

◆不動産成約価格と市場金利の動向は、反比例している
 一方で、市場金利(旧住宅金融公庫の融資基準金利)と首都圏・東京都の中古マンションの平均成約価格の推移を示したものが表1です。リーマンショック前の2007年12月以降、毎年12月時点の数値を抽出していますが、両者は多少のタイムラグを伴いながらも見事に反比例しています(金利と物件価格の上昇下降サイクルが正反対)。これは何を意味しているかと言えば、「不動産の金融商品化」に他なりません。
 

 

 ◆消費税以上に、市場金利の動向には注意が必要
 上記グラフやデータ、またマクロ経済への考察から推測できることは、現在の国内不動産価格はリーマンショック前の高値を抜いてバブル気味である点が一つ。また二つ目は、米国に於ける過去約3年間で9回の利上げやEUでの量的金融緩和策の昨年末での終了宣言に象徴されるように、不動産価格の高騰を可能にしてきた歴史的な超低金利状態は世界的に終わりつつあるという点です。

つまり、現在の国内不動産価格は近年のほぼピークに達しており、今後は下落する可能性が高いという事です。
 もし国内金融情勢の変化により、今年中に不動産価格の下落傾向が鮮明になれば、消費税増税前に不動産購入するメリット以上に、物件値下がりによるデメリットの方がはるかに大きくなる可能性があります。

不動産購入を検討されている方は、消費税率UPだけに目を奪われることなく、対象物件が本当に購入に値するものか否か(価格も含めて)、慎重に判断されることをお勧め致します。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  堀江 雄二 CFP(R) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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