2018年9月2日   自分でやってみた相続の不動産所有権移転登記

 

 先日、不動産を相続し、所有権移転登記手続きを自分でやってみました。必要書類を集めるのは時間がかかりましたが、「手続き自体は思ったより難しくない!」というのが素直な印象でした。便利なネットを活用したのですが、この経験から、「何の書類」を、「どのような順序」で集め、「申請のためにどのような書類を作成」するか分かれば、自分でもできると実感しました。今回は、私の具体的な経験についてお話ししましょう。

 

◆事前に集める必要書類一覧(法定相続)とは
 自分で登記するため事前に準備をしておくべき必要書類は、原則として以下のような書類となります。
①固定資産評価額通知書
②不動産登記情報
③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続した全部戸籍謄本)
④被相続人の住民票の除票、または戸籍(除籍)の附表
⑤相続人全員の現在の戸籍抄本(個人事項証明書)、または謄本
⑥相続登記をして所有者となる人の住民票
 *上記以外の書類が必要となる場合がありますので、詳細は、法務局にお問い合わせください。

 

◆必要書類をとりまとめる
1.役所に行き「①固定資産評価額通知書」を作成してもらいます。

 

2.①には不動産の登記内容が記載されていますので、その内容(地番、家屋番号)を確認するために、登記情報提供サービスにより、個別に「②不動産登記情報」を取得します。「表題部」「権利部(甲区、乙区)」があり、不動産の地目、地積、所有権者名などの登記情報が詳細に確認できます。「登記情報提供サービス」とは、インターネット上で、不動産、及び法人登記情報を閲覧(印刷可能)できる有料サービスです(一時利用で1件当たり335円。閲覧可能時間は8:30~21:00、土、日、休日はサービスなし)。もちろん自宅のパソコンで印刷可能ですが、インターネットで取得できない方は、直接法務局に行って、登記簿を請求することが可能です。

 

3.次に③④戸籍謄本の準備です。ここで重要な点は、被相続人(亡くなった方)の戸籍は、出生から死亡まで、全部の戸籍であることです。特に、出生地が死亡時の本籍と異なる場合は、出生地(被相続人が生まれた時の戸主の本籍地)の役所に行くか、郵便で請求することになりますので、これが一番時間と手間のかかることになります。

 

4.そして、相続人全員の「⑤戸籍抄本」と「⑥住民票」をそろえれば、ひとまず安心です。

 

◆実際に申請書類を作成してみよう

5.作成するのは、⑦登記申請書、⑧法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(以下、申出書)、⑨法定相続情報(一覧図)の3点です。いずれも法務局のホームページに届出様式がありますのでダウンロードして作成します。⑦登記申請書は、一筆ごと、持ち分ごとに作成する必要があります。ただし相続人が同じであれば、土地、建物別ですが、それぞれ1枚にまとめて作成することができます。そこに①に記載されている課税価格(1,000円未満切り捨て)を記入し、それを基に登録免許税(100円未満切り捨て)を計算して記入します。HPには書き方見本が見られますので、難しく感じませんでした。

 

6.次に⑧申出書と、⑨法定相続情報を作成します。これは、昨年、平成29年5月29日から運用開始となった「法定相続情報証明制度」に則った書類で、相続登記を促進するために新たに作られた制度です。この制度による書類(⑨「一覧図」)の写しがあれば、預金の払い戻しなど、さまざまな相続手続きに利用できるとされています。このシステムを適用すれば、何通もの戸籍謄本などをとる必要がなくなります。ただ、新しい制度なので、提出先により対応がまだ定まっていません。相続の手続きの際の必要書類は、この法定相続情報だけで済むのか、それとも原則通り、戸籍謄本などの書類を揃えるべきなのかの確認は必要でしょう)。

 

◆いざ法務局で申請してみた

7.相続物件を管轄する法務局(支局)を訪問(「⑩認印」「⑪本人確認書類」を持参)しました。1回目は事前に予約していましたので、待つことなく相談でき、すぐに内容を確認してもらいました。不足書類があったことで、翌日、足りない書類をそろえて2回目の訪問。その場で書類を審査、登録免許税を納入(収入印紙を申請書に貼付する形で納入)して申請手続きが終了しました。個人的には、「アッという間に終わった」という印象でした。

 

8.申請からわずか2日で法務局支局から「登記完了証」、「登記識別情報通知」、「法定相続情報一覧図の写し(証明書)」が「書留・本人限定郵便」で自宅に届きました。
ただ、不動産の現況、遺言があるなどの相続関係事情により必要書類が異なり、その準備に時間がかかります。この点が大きなネックと感じる方は、司法書士などの専門家にお願いすることが一番です。少しでも自分でやってみたいと思った方は、法務局、市役所(役場)などの公的機関で無料相談を受け付けていますので、そのシステムを活用することも大きな力になります。

 

 

実行前は一見煩雑に見えましたが、予想以上にスムーズに手続きは終わりました。事前に周到な準備を行うことは必要ですが、法務局等、公的なホームページでの案内がとても充実してきたことも、短期間で完了した大きな理由です。また、私の場合は、書き方を丁寧に教えてくれた、法務局支局の窓口の担当者にも助けられました。ネット(IT)の進歩には目を見張るものがあり、今後もいろいろな手続きに活用できるとの知識を得たことが大きな収穫になりました。興味のある方は、ご自分で手続きしてみるのはいかがでしょう

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  小池正一郎 (CFP(R))

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

この内容は2018年5月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。  

 

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