2018年7月15日  配偶者居住権

 

H30年の民法改正で配偶者居住権が新設されました。 

 

 今までの制度では、相続する財産に預貯金などの金融資産が少ない場合、配偶者は自宅に住み続ける事が困難な場合がありました。  

 例えば、以下の図のような場合、配偶者が自宅に住み続けるためには、自宅を相続する事になります。現行制度では、子供と法定相続分通りに分割すると、金融資産は全て子供が受け取ることになります。さらに不足分として、500万円を工面して子供に渡す必要があります。  

 もし配偶者が500万円を工面できなければ、自宅を売却して現金化するという事も必要でした。もちろんその場合は、自宅に住み続ける事は難しくなります。  

 今回の改正で、配偶者は自宅に住み続けることができるとともに、生活資金として預貯金についても確保できるようになりました。

 

図1:配偶者居住権

 

 上の図で、相続財産が3,000万円の自宅と2,000万円の預貯金だった場合、新制度では、配偶者は自宅の居住権として1,000万円と、生活資金として預貯金も1,500万円相続する事ができます。  

 再婚などで、配偶者と子供の血縁関係が複雑な場合も、子供が自宅の所有権を相続するので、良い遺産分割の方法と思います。  

配偶者居住権のポイント  

・相続開始の時点で配偶者が自宅に住んでいる事  

・配偶者居住権の登記を行う  

・権利は売買できない  

・配偶者が死亡するまで存続

 介護施設等への転居や、新たに自宅を購入した場合等はどうなるのでしょうか?

現在の改正条文では明確な規定は見つかりませんでした。空家のまま放置するのも問題ですね。 

◆自宅の居住権の価額は?  

居住権の評価額は妻の年齢などに応じて算出されます。

高齢になるほど低くなる、となっていますが、具体的な計算式は現時点では不明です。

 (2018/07/09現在)  

配偶者居住権の評価額は遺産分割にも影響があるので、評価方法(計算式)も明確にしてほしいですね。

◆自宅の維持管理費用  

通常の必要な費用は、使用者である配偶者が負担します。

修繕が必要な場合は通常、配偶者が修繕を行い、費用も負担します。

しかし、配偶者が必要な修繕を行わない場合は、所有者が修繕をすることができます。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  植田 周司 CFP(R) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

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