2018年3月1日 押さえておこう!住宅ローンの「金利」と「総支払額」

 住宅ローンは、ここ数年、低金利が続いており、住宅の購入を検討している人にとっては一歩前に踏み出しやすい状況が続いています。代表的な固定金利商品であるフラット35についても、ここ数年、金利の低下が続いており、2016年8月の最低金利は0.900%とフラット35の史上最低を更新しました。以降、2017年6月に至るまで、フラット35の金利は1.020%~1.120%の間で推移しています。(返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合)。今回は、一歩前に踏み出す時に押さえておきたい注意点をお話しします。

 

◆「金利」は今と昔を比べてみると違いがすごい!
 今から5年前の平成24年5月、フラット35の最低金利は2.07%(返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合)でした。それ以前にくらべれば十分に「低金利」と言えますが、さらに今ではフラット35の金利は5年前の金利に比べて半分になっているのです。
金利が返済額に与える影響は大きく、1%の違いでもはっきりとした差が出てきます。たとえば、フラット35で3,000万円を借りた場合(35年返済、元利均等毎月返済、ボーナス返済なし、融資率9割以下)、金利が1.00%の場合と2.00%の場合における月々の返済額、総返済額は以下のとおりとなります。

 

■金利が1.00%の場合
 毎月返済額:約84,700円
 総返済額 :約3,560万円
■金利が2.00%の場合
 毎月返済額:約99,400円
 総返済額 :約4,170万円

 

 金利差はほぼ1%ですが、月額で約15,000円、総返済額では約610万円の差が生じます。借りた金額は同じ3,000万円でも、これだけの差が生じた理由は、ただひとつ「金利」の違いです。わずかな金利差でも住宅ローンの負担に大きな影響を与えることや、過去にくらべて今の住宅ローン金利がいかに低いかということがわかるでしょう。

今すぐに住宅を購入する場合には、低金利のメリットを十分に生かせますが、今後どのように住宅ローン金利が推移するかは不透明です。金利が少しずつでも上がっていけば、返済額も変わってきますので、数年のうちに住宅購入の予定がある場合などは、金利の動きを確認しておくとよいでしょう。 


◆「総支払額」は住宅の値段ではない!
 もう1つ見ておきたいのが、住宅ローンにおける「総支払額」です。総支払額のうち金利(支払利息)を除いた主なものとしては、「保証料」「(取扱)事務手数料」「団体信用生命保険料」(以下、コスト)があります。

 

①保証料
 保証料については、借入時に一括で支払う「外枠方式」と、金利に上乗せして支払う「内枠方式」がありますが、金融機関による違いはもちろん、借入金額や借入期間によっても金額が異なります。一般に、ネット系の銀行ではゼロということが多い一方で、都市銀行では数十万円程度、あるいはそれ以上になることもあり、住宅ローンを検討する際には重要な要素のひとつになります。

 

②事務手数料
 都市銀行などでは定額方式(43,200円、54,000円、108,000円など)、ネット系の銀行では定率方式(融資金額の2.16%など)が多く見られます。事務手数料は、定率方式の場合ほどまとまった金額になりやすく、仮に、融資金額の2.16%という設定で3,000万円を借り入れれば、648,000円にもなります。

 

③団体信用生命保険料
 多くの民間金融機関の住宅ローンでは、団体信用生命保険(*1)への加入が融資の条件(保険料が金利に含まれていることが多い)になっていますが、フラット35では任意加入です。仮に、住宅ローン(フラット35)により3,000万円を金利1.0%、元利均等(*2)35年返済で借りた場合に団体信用生命保険(3大疾病保障(*3)あり)に加入すると保険料(特約料)の総支払額は300万円を超える金額(3,102,400円)になり、加入するのとしないのとでは総支払額に大きな差が生じることになります。万が一に備えて加入するのが当然と考えることも多い団体信用生命保険についても、総支払額を踏まえて検討する必要があると言えるでしょう。
上記のコストは、かかるのとかからないのとでは大違いです。似たように見える住宅ローンでも、これらのコストを細かく意識せずに決めてしまうと、結果として、総支払額が数百万円変わってくるということも十分に有り得ます。

住宅ローン選びにおいては、すぐに目が行ってしまう金利の違いだけでなく、「総支払額」を考慮して検討を進めるようにするのが、よい住宅購入といえるでしょう。

 (*1)団体信用生命保険
  住宅ローンを組んだ人が、ローン返済途中で死亡または高度障害などになった場合、金融機関のローン残高を填補する目的の保険。
 (*2)元利均等
  住宅ローンの返済方法で「元利均等返済」のこと。毎月の支払返済額が一定となる返済方法。
 (*3)三大疾病保障
  「がん(悪性新生物)」「急性心筋梗塞」「脳卒中」のいずれかになった場合に、一時金として「三大疾病保険金」を受け取れる保障(保険)のこと。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   左右木伸也  AFP

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 この内容は2017年7月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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