2017年8月9日 日本にも近づいてきた金利上昇の波

 

「いよいよ低金利時代は終わり!」。約5か月前、トランプ大統領の登場で世界情勢は一変しました。大きな流れでいえば、金利高、株高、ドル高への転換(この動きをトランプラリーと言います)です。最初は米国で始まりました。日本はトラック一周遅れの状態でしたが、いよいよ金利高の流れが日本にも波及してきました。「住宅ローン金利 一斉引き上げ」(41日付日本経済新聞)は、その序章といえるでしょう。

 

◆トランプ大統領の登場で米国に流れる資金 

米国新政権と国際金融市場の関係を読み解く重要なカギは、昨年11月の大統領選挙の勝利演説です。そこで発せられたのが、アベノミクスの3本の矢ならぬ「トランプノミクスの3R」-すなわち「道路、公共施設などの社会資本の再建(Reconstruction)」「減税(Reduction)」「規制改革(Reform)」-です。この政策が実現するなら、政府支出は増大し、企業の投資が増え、経済は拡大、金利は上昇するとの思惑を生み、「高いところにお金は流れる」現象で、株高、ドル高をもたらしました。

 

◆ビジネス経営型政権運営を続けるトランプリスクを意識して資金は逆回転 

残念ながら、3月以降はオバマケア代替法案の撤回などその実現性に大きな懸念がでて、当選決定直後の勢いは弱まり、トランプラリーはほとんど剥げてしまいました。市場は不安定な状態を嫌い、資金を引き揚げているからです。ただ、トランプ3R政策が消滅したわけではありません。時間はかかっていますが、実現の可能性は残っており、トランプラリーの再開が期待されます。 

 

◆着実に進む米国経済の成長を受けて米国金利は上昇 

ところで、米国中央銀行(FRB)は、昨年12月に続き、今年3月にも政策金利を再び0.25%引き上げ、現在は0.75-1.00%としました。一方、日本の短期市場金利はマイナス0.05%近辺で、日米の金利差は約0.85%です。今後は米国が2~3回の引き上げが予定されていることに対し、日本は物価がよほど急騰しない限り、現状政策を維持すると見込まれますので、しばらく金利差は拡大方向です。しかし、いずれ日本が追いつくと見ています。

 

◆日本でも高まる物価上昇圧力 

現在の日米の金融政策の違いとなっている主な要因は、経済成長率と物価動向です。米国の2016年の成長率は+3.5%(実質+インフレ率)に対し、日本は1%程度です。また、物価の違いはより顕著です。米国の2月消費者物価指数(CPI年率、3/15発表)は総合が+2.7%、コア(食料とエネルギーを除く)でも+2.2%と、FRBの物価上昇目標値(+22.5%)を突破しています。一方、日本は相変わらず低水準を続けています。ただ、コア指数(総合から生鮮食品を除く)が14カ月ぶりに今年1月からプラスに転じ、2月も+0.2%に上昇(3/31発表)するなど長いデフレの世界からようやく脱却しつつあります。しかも、4月以降、電気・ガス料金を始め、日用品、食品の値上げが続いており、物価上昇圧力が高まっています。原油動向も心配です。50ドル(1バーレル、WTI)以上で推移すれば前年比約10%高となります。

 

◆日本の利上げは先だが、動き始めたら早いことを忘れない 

この点からも、日本の金利上昇は「遠い先」と考えない方がよいと思いますが、日銀は物価安定の目標は2%であり、そこに達成することが確定するまでは、政策金利の変更は急がないでしょう。また今、日本の金利が高くなる(金融緩和政策をやめる)と、円高になる可能性があることも政策決定者は意識しているはずです。

 

しかし、次の日銀の政策決定会合は426~27日(米国は52~3日)の予定ですが、そこで変更がないといって、市場金利は動かないかといえば、それは別の話です。動き始めたら急速に上がることが多いとの経験則もあります。政策金利とは別に、金融機関は営業戦略で先を読んだ決定をすることを考えて、そろそろ金利動向にも注意が必要になってきました。

2017/4/2

  

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 小池正一郎 CFP(R)

 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

この内容は2017年4月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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