2017年5月1日   ライフプラン上の「資産」を考える ~不動産と貯蓄のバランスとは~

 

 家計運営のライフプランにおいて、効率的な「バランスをとる」ことは大事なポイントの一つです。

 このバランスをとるということは簡単そうに聞こえますが、イメージしにくいかもしれません。例えば、家計の貸借対照表を作った時に、不動産(住宅)も貯蓄(預貯金)も「資産の部」です。この両者を効率的にバランスをとるというと少しわかりやすくなるでしょうか。

 もう少し具体的な例でいうと、住宅を購入した場合に重要な不動産(土地・建物)と貯蓄(預貯金)の資産バランスの取り方をライフプランに沿ってご説明します。 

 

◆住宅取得時の資産バランスの取り方の具体例 

 住宅を購入した時に、家そのものの本体価格に諸費用などを含めて、自己資金が無い、いわゆる「頭金無し」とし、全額をローンで組むと、預貯金の取り崩しをしなくていいわけですが、一般的なマニュアル本には、「購入資金の2割程度は自己資金を用意した方がベスト」と書いてあります。確かに自己資金を用意した場合は、「頭金無し」より借入額が少なく、月々返済額が少なくなり、家計の負担は少なくなります。一方、頭金無しでローンを組めば、預貯金の取り崩しはありませんが、ローン返済額は多くなります。

 ところが、最近はそういった発想とは逆の、低金利を利用した「頭金無し」でローンを組む方が増えています。貯蓄残高はキープできるので、新居に移った後のライフプラン上の急な支出にも対応が可能となるからです。

 ここで面白い現象が見られます。「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」を受けられる場合には、借入額が多いほど「税額控除額」が多くなり、納めた税金が多く還ってきます。昨今の金利状況を見れば、1%以下の金利も多く見受けられます。ということは、政策として、いわゆる金利補助の1%を受けながら元金を返すことになります。例えば、ローン金利0.8%の場合、メリットは0.2%が「益」となりお得な優遇税制の活用方法といえます。

 これらのことは「超低金利の時代」だからこそといえ、新しい発想を取り入れたプランが考えられます。

 「頭金無し」がいいものだと無計画に盲進せずに、不動産・ローンvs預貯金のバランスをキャッシュフローを使ってシミュレーションをおこないプランニングをすることが「バランスを上手に取っている」と言えるでしょう。

 

◆住宅を保有している時の資産バランスの取り方の具体例

 既に住宅をお持ちの方の場合も、超低金利の活用を検討してみましょう。①の住宅ローン控除は年末ローン残高の1%が税額控除として10年間還付されます。この恩恵を充分受けつつ、10年が過ぎれば次のステップとして貯蓄の余裕部分を使い「繰上返済」を検討するのです。

 預貯金の利回りとローン金利を比較し、ローン金利が預貯金金利を上回っていれば「繰上返済」を実行します。超低金利の利息は、元金に見合うだけ部分は支払わなくて済むという効果があります。ローン残高は減り、貯蓄額も減りますが、うまく運用したことになります。逆に、金融商品の運用利回りがローン金利を上回っていれば、運用商品を取り崩さずに運用を続けるとよいでしょう。

 

◆リタイア後も資産バランスを上手に取ろう

 例えば、「持ち家」と「賃貸」のリタイア後を比較してみましょう。

 賃貸の場合、年金生活の中で住宅に関連する支出は、家計の中で多くを占めるようになります。そして、将来においても貯蓄を加速度的に取り崩していくこととなり、不動産を一生賃貸するということが、支出が続くということで家計にとって不安材料になりそうです。

 持ち家の場合はどうでしょう。今まで預貯金で貯めることが出来たであろう部分を、資産である不動産(住宅ローン返済)につぎ込んできたので、金融資産はそれほど増えていませんが、年金生活の家計の中で、住宅に関連する支出は、賃貸などの家賃の負担がないことから、固定資産税など、年間数十万円で済むこともあります。貯蓄の取り崩しは「賃貸」より多くはありません。

 更に、高齢期になってホーム等に入居しようとする場合、金融資産以外に不動産(住宅)の有効活用が可能です。老後資金の調達方法として、自宅を有効活用して「持ち家を賃貸に出す」「持ち家を売却する」「リバースモーゲージ」などいろんな方法が考えられます。どの活用方法が有効か、そのときになって計画しても遅くはありません。

 

このように、ライフプランの中で、不動産の位置づけをどうするのかは非常に大事なポイントです。貯蓄とのバランスをいかに上手に取れるかどうかが、ライフプランが上手に運営できているかの目安となるでしょう。

 

 ※住宅借入金等特別控除 / 国税庁HPhttps://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1213.htm 

 ※②リバースモーゲージ / 国土交通省HPhttp://www.mlit.go.jp/common/000123003.pdf

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)監事 市田 雅良 (CFP®) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2017年1月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

 

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