2015/02/01 これから始まる「厚生年金の減額」に備える老後の心構え

ライフプランを作成する上で厚生年金ははずせない

 人生の3大資金は、教育資金、住宅資金、老後資金と言われています。特に30歳台から50歳台の方で、今後ライフプランを考える上で重要になってくるものは、老後資金をどんな資金で用意するかということです。

 私がFPとして相談を受けるとき、若い方から聞かれることの一つとして、「厚生年金の保険料を支払っても本当に支払った分が戻ってくるの?」「掛け捨て保険料と同じだね!保険料を払っても損するね!」ということを言われます。しかし、定年退職をし、働かなくなった後の老後の生活資金は、間違いなく厚生年金なのです。

 国が支払ってくれるのを待つのだけでなく、現役世代のうちから、老後の収入の柱となる厚生年金の位置づけを理解し、年金の計算方法や仕組み、および概算額を押さえておくことは大事なことといえるでしょう。もちろん、ねんきん定期便等で概算額を把握することも大事です。

 

日本の人口統計を見ると、年金が減っていくのは当然のことと考えよう

 2013年版高齢社会白書によると、2013年の日本の総人口は、12,729万人から37年後の2050年には1億人を割り9,708万人になります。

特に、15歳から64歳までの現役といわれる世代においては、全人口に占める割合が62.0%から51.5%まで減る一方、65歳以上の高齢者は同25.2%が38.8%まで増えるそうです。また、0歳から14歳の人口も12.8%が9.7%となり少子高齢化が急速に進んでいくとの見通しとなっています。

 日本が世界第1位の長寿国であるということは、保険料を納める現役世代の減少に加え、寿命が延びて年金受給者が増え、年金財政は、ますます厳しさを増すということを意味しています。

 

厚生年金はどのように減額される?

 厚生年金の受け取り額は、実は毎年改定されています。平成12年度の国民年金の受取額は、804,200円であったものが、平成264月からは772,800円となり、この間▲31,400円もの減額となりました。

 これは、デフレ経済のもと、物価が下がった分、年金も減額するというルールが適用された結果です。逆に、物価が上がれば、年金が増えるといえます。このルールを「物価スライド」といい、サラリーマンなどが加入している厚生年金にも適用されるのです。

 ちなみに筆者の年金は▲60,500円の減額になりました。両方合わせると約▲92千円の減額となり、生活費にも大きく影響してきます。

しかし、現在の改定ルールでは、年金財政は厳しくなる一方なので、物価スライドに、一定の調整率(マクロ経済スライド率という)を乗じて年金額を改定する制度が決まっています。このマクロ経済スライドは、現在まで一度も実施されていませんが、平成27年4月以降に実施される可能性があります。

 マクロ経済スライドとは、少子化の影響による被保険者数の減少率と平均余命の伸び率を勘案した「調整率(国は当面0.9程度と見込んでいる)」を年金額の改定率に反映させる仕組みで、今後、被保険者が増え、平均余命が減るか、または物価が相当上がらない限り、年金は増えないことになります。(下表参照)

これからの年金減額に備える心構え

 「物価スライド」と「マクロ経済スライド」は、厚生年金の受け取り額を決定する大事な指標と言えます。まだまだ年金を受け取ることの実感できない若い世代であったとしても、今後の動向を注意深く見守る必要があります。

 平成29年度まで、厚生年金保険料は毎年引き上げが予定されて個人の負担はじわじわと増え続けているのですが、平成264月からは消費税率が8%に引き上げられ、今後も10%に引き上げが予定されているということで、ますます個人の負担は増しています。しかも、年金財政安定のため、厚生年金の受け取り額は、本格的な引き下げが行われる可能性があります。収入が減り、支出が増える予測の中、老後の資金はすぐに貯められるものではありません。将来の暮らしを守るためにも、老後の主な収入である年金の指標や水準、および制度の改定の仕組み等を、「自分に関係が無い」とすまさず、しっかり理解することで、自分の年金額がいくらか予測できるようになっておきたいものです。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 理事 大庭 和夫



この内容は2014年5月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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