2016年10月8日 「相続の時に『分割できない不動産』があったら、あなたはどうする?」

  例えば、父親が亡くなっていて3人の子供がいる家庭であれば、その後、母親が亡くなった場合の相続は、その子どもには、3分の1ずつ相続する権利があります。相続財産が自宅のみだったら、普通は公平に相続させるといっても、不動産は3等分に分けられません。仮に、3人の子ども全員が自宅を既に所有していて、母親の自宅を使用する予定がない場合には、売却する目的で、3分の1ずつを共有持ち分として相続し、売却して換金したのち、お金を分ける方法が選択できます。この方法を換価分割といいます。また、3人の子供のうちの1人が自宅を継ぐ場合でも、敷地に余裕があれば、あらかじめ敷地を分けておくことも考えられます。

 

◆一戸建ての場合

 敷地を不動産登記法で筆(ふで)と表記し、これを数筆に分けることを分筆(ぶんぴつ)といいます。具体例として、以下の分筆参考図をご覧ください。相続開始前に、参考図のように分筆するとしましょう。ポイントは、3人の相続人である子どもたちが納得する分け方にすることです。仮に、話し合った結果として、母親の自宅を長男が相続するとします。すると、敷地Aを長男が相続する予定の敷地となります。次に、Bを次男、そして、Cの敷地を三男が相続すると決まったら、点線で示しているように、あらかじめ敷地を3つに分筆しておきます。更に、母親が上記の内容のように相続させる遺言をしたためておけば、遺産分割の話し合いを相続発生後にする必要がなく、すぐに手続き等を進めることができるので最良といえるでしょう。

 

 

         
   
     
 
 
 

  

◆マンションの場合

 では、不動産がマンションのみの場合には、どのような分割が考えられるでしょうか。今回は代償分割という方法をご紹介しましょう。例えば、相続財産であるマンションの相続財産評価額が1,000万円と仮定した場合、その他の相続財産として現預金が、2,000万円あるのであれば、相続人の1人がマンションを、残りの2人が現金で1,000万円ずつ、相続財産を分割する方法です。ただ、上記の例のように、マンションの相続税評価額に相当する十分な現預金があるケースの方が、現実的には少ないでしょう。その場合、生命保険を活用する方法があります。被相続人である母親を保険契約者兼被保険者にして、マンションを相続する相続人を保険金の受取人とします。もしマンションの評価額が1,000万円であるのであれば、保険金は2,000万円にします。その後、相続が発生した際、マンションを相続する子どもが2,000万円の保険金を受け取って、他の子ども(つまり、本人からみると、兄弟)へ1,000万円ずつ支払うという方法です。このようなお金のことを「代償金」といい、土地の代償としてお金を渡す方法を「代償分割」といいます。相続対策として、生命保険を活用する知識も、知っておくと相続対策をする上で選択肢を増やすことができるでしょう。
相続が「争族」になってしまう多くの事例は、実は分割できない不動産が要因であることが全体の6割~7割を占めているといわれています。相続税の納税資金不足でもめているのではなく、「分割出来ない」不動産や「売却が難しく換金出来ない」不動産が原因で、相続人同士がもめることが多いといえます。ですから、不動産をどう分割するかを話し合って、決めておくことが、良い相続につながるといえます。

 

◆不動産・相続対策を積極的にする方法もある
   これまでいくつか挙げてみたのは、比較的初歩的な方法といえますが、最後に積極的な相続対策をご紹介しておきましょう。自宅とは別に、相続が発生するまでは、賃貸で貸しておけるようなマンションで、相続財産評価額が同じぐらいの物件を2物件購入しておきます。分割しにくい不動産が相続財産となるときのために備えた遺産分割の手法は、知っておくととても合理的です。相続が発生する前に、できる限りの対策をしておけば、安心して子どもに相続させることが可能になるでしょう。この方法は、ご自身が相続人の立場でも、是非知っていていただきたい内容といえます。現預金などの現物として分割できる財産はもめる要素が少ないですが、分割が難しい不動産については、特に注意して相続対策することをお勧めします。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 志村 孝次(AFP) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年4月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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