あなたは住宅ローンを選ぶとき、何を見て決めますか。住宅金融支援機構が民間銀行の住宅ローンを借りた人に行ったアンケート調査結果(※)によると、住宅ローンを選んだ決め手として、59.3%の人が「金利が低いこと」と回答しています。その他の理由としては、「繰り上げ返済手数料が安かったこと」、「将来、金利が上昇する可能性があるので、将来の返済額をあらかじめ確定しておきたかったから」などもありましたが、いずれも20%以下で、大半の人が金利を最も重視しています。 これは、果たして正しい選択なのでしょうか、考えてみましょう。
※ 住宅金融支援機構「2015年度民間住宅ローン利用者の実態調査(第1回)」
◆変動金利型住宅ローンに注意!
変動金利型住宅ローンの金利は、現在1%を大きく下回るほどの大変低い水準となっています。ただ、金利は6カ月ごとに変わりますので、将来金利が上がった場合、返済負担が増えることになります。今、35年返済で金利0.775%の変動金利型ローンを3,000万円借りたとすると、毎月の返済額は81,576円となりますが、仮に5年後に金利が1.5%に上昇したとすると、毎月の返済額は8,831円増の90,407円に、さらに2.0%に上昇した場合は15,249円増の96,825円となります。変動金利型ローンを借りる場合は、将来金利が上昇しても返済できるだけの余裕をもった計画で臨むことが大切です。
◆住宅ローンを借りると金利のほかに諸費用がかかってくる
住宅ローンを借りた場合、支払わなければならないのは金利だけではありません。金利の他に次の①から③ように諸々の費用がかかってきますが、そのかかり方がローン商品によって異なっているのです。
① 融資手数料:
多くの大手銀行は定額で32,400円としていますが、それ以上の銀行もあります。また、借入金額に2.16%など、一定率を掛けた金額としている金融機関もあります。
② 保証料:
銀行は一般的に系列の保証会社の保証を付けて融資するため、その保証料が必要となりますが、フラット35は保証料が掛かりませんし、保証料を無料にしている銀行もあります。
③団体信用生命保険料:
団体信用生命保険とは、返済中に利用者に万一のことがあった場合、死亡保険金により借入残高全額を返済してくれる保険です。その保険料は銀行の場合、一般的には銀行負担となっていますが、フラット35は毎年1回払いとなっています。
◆金利が低くても総支払額が多くなる場合がある
次の表は、いろいろなローン商品について、借入期間中の総支払額を比較したものです。
3,000万円を、全期間固定金利の35年返済で借入れたものとします。
|
金利 |
返済額 |
保証料 |
団体信用 生命保険料 |
事務 手数料 |
借入期間中の総支払額 |
A銀行のローン |
1.82% |
4,058万円 |
62万円 |
- |
3万円 |
4,123万円 |
フラット35 (ケース1) |
1.76% |
4,020万円 |
- |
211万円 |
3万円 |
4,234万円 |
フラット35 (ケース2) |
1.54% |
3,882万円 |
- |
209万円 |
65万円 |
4,156万円 |
これを比較してみると、A銀行のローンは金利が一番高いのですが、借入期間中の総支払額は最も少ないことが分かります。これは、A銀行は保証料が掛かる代わりに団体信用生命保険料が銀行負担となっていることと、事務手数料が少ないことによるものです。
このように、ローン商品を選ぶ際には金利のみで比較するのではなく、諸費用も加えた総額で比較しなければなりません。金利は毎月変わりますので、その都度計算して商品を選ぶことが必要です。
一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 水野 誠一 (CFP®)
KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。 |
この内容は2015年10月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。
【免責事項】
かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。