2015年8月10日 知っておきたい最近の「団体信用生命保険」事情

  住宅を購入するときには、ほとんどの方が利用することとなる「団体信用生命保険」。普通の生命保険とどう違うのでしょうか。そして、どういった利用法をするのでしょうか、FPの立場から知っておくべきポイントを説明します。

◆そもそも団体信用生命保険とは

 団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りた人(債務者)が返済中に死亡したり、高度障害状態となった場合に、借入先の金融機関に保険金が支払われるものです。これによってそのときの住宅ローンの残高(残債)が一括して返済され、遺族や高度障害を被った人はその後の住宅ローンの支払いが免除されることになります。
 民間の金融機関の住宅ローンの場合は、団体信用生命保険の加入が義務付けられています。加入後は途中で解約することはできません。通常、団体信用生命保険の保険料は、金融機関が負担するため、債務者が負担することはありません。

 

◆団体信用生命保険に付けられる特約の内容とは

 まず、保険金で残債が一括返済される特約について、ご紹介します。
 かなり以前から取り扱われているもので、従来の団体信用生命保険に、三大疾病となった場合の保障を加えたものがあります。これは、がん(悪性新生物)、脳卒中、急性心筋梗塞になった場合に、保険金で住宅ローンの残債が一括返済されるものです。
 この特約部分については、生命保険で残りの住宅ローンの借金が一括返済される要件に注意が必要です。がん(悪性新生物)の場合は、責任開始日から90日を経過する日までにかかったもの、上皮内がんや一定の皮膚がんは保障の対象外です。急性心筋梗塞、脳卒中の場合は、「約款に定める所定の状態」であることが要件となっていて、これがかなり重篤な症状です。この保障の対価として金利に0.3%上乗せされること、特約を中途脱退することはできないことに留意する必要があります。
 最近では、この三大疾病の保障に加えて、次のような商品が出てきました。

 

・糖尿病・高血圧疾患・慢性腎不全・肝疾患・急性膵炎の合計八大疾病で180日以上継続入院した場合の残債が一括返済されるタイプ。
・病気やケガで「特定の状態」や「所定の要介護状態」になったときに、残債が一括返済されるタイプ。

 

 次に、当面保険金で返済が継続される特約について、ご紹介します。
 前記の三大疾病に加えて、高血圧性疾患・急性腎不全・糖尿病・肝硬変の4つの生活習慣病の合計7種類の疾病にかかった場合に、次のような保障がある団体信用生命保険です。

 

・前記の7種類の病気にかかって、いかなる業務にも従事できない状態が30日間継続したと医師に診断された場合、31日目以降住宅ローンの返済について、1年間を限度に保険会社が肩代わりします。
・この状態が1年間継続した場合、住宅ローンの残債が一括返済されます。

 

 このタイプの団体信用生命保険の特約保険料は債務者が負担し、一般的に保険料は加入時から5年ごとにアップしていきます。中途解約は可能ですが、中途加入はできません。


◆特約を付けているからと言って安心は禁物

 特約の保障内容については、詳細に規定されています。医師の診断内容によって、住宅ローンの残債が一括して支払われない場合がある点に留意してください。前項で説明した二つの特約以外にも、債務者の親が一定の要介護状態となった場合に一時金が支払われるタイプのものもあります。これは親の介護をすることで、収入がダウンするリスクに備えるものと言えます。
 これらの特約はすべての金融機関で取り扱っているわけではありません。金融機関ごとに保障する内容が異なっていることがありますので、特約を付ける場合には、住宅ローンの金利だけでなく、どんな特約があるのかにも目を向けて、金融機関を選ぶと良いでしょう。

 

 このように、住宅ローンを組むことによって想定される様々なリスクを、新しい団体信用生命保険の特約を活用することで、ある程度軽減することができるようになってきました。そのための対価(上乗せ金利・保険料)を支払うことで、総返済額がどの程度上昇するかを計算して、その特約を活用するかどうかを決める必要があると思います。 


一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 深澤  泉 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2015年5月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。


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