2015年7月1日 家族内所得格差をなくす方法とは?


 

 

 最近、「21世紀の資本」(トマ・ピケティ著)という書籍が話題になっています。資産家と労働者の所得格差が拡大していくという内容ですが、同じような所得格差が、実は家庭内でも発生しているのではないかと思っています。今回は、この「格差」をなくすための方法について考えてみます。


◆ミドル世代の生活不安

 少子化の傾向が顕著になる中で、20代や30代の若者の非正規雇用化や年金に対する将来不安は、社会問題となっています。我々がセミナーで話すような年代別の生涯家計収支では、子どもが誕生してからの教育費や、大学卒業までの教育にかかる費用負担が特に大きく、30代からの約20年間は、1年ごとに収支を把握すると、赤字になる可能性が非常に高いのが現状です。
 また、女性が働き続ける環境は、まだまだ整ったとは言えないため、たとえ出産後に職場に復帰できたとしても、保育園等にかかる子育て経費の負担は大きく、給与所得のかなりの部分が持っていかれることになります。


◆シニア世代の将来不安
 一方、現役を卒業し、セカンドライフを楽しむ60歳代後半のシニア世代には、別の悩みがあります。子供に介護負担をかけないよう、健康増進に励みながら、今までできなかった趣味嗜好を楽しむものの、将来の年金減少や医療費や介護費の負担増を心配しているという矛盾を抱えています。その結果、手元にある資産(これは退職金と現役時代にコツコツ貯めた預金がほとんど)を減少させないよう、投資資産として運用することもなく、手元のたんす預金として眠らせている状態です。これでは、不安は広がるばかりです。


◆家族内の所得格差問題を広い意味で捉えると

 このような世代間の所得格差、収支のミスマッチは、最近よく取り上げられるようになりました。これを家族内に置き換えると、祖父母世代が余裕資金を持つ一方で、父母世代はお金に窮している、広い意味での家族内所得格差が発生していると言えます。

 団塊世代の方たちは、自分のミドル時代も同様にお金がなかった、それでも子供を育ててきた、という自負もあります。しかしながら、今は時代が違います。今の若夫婦は、共働きでないと家計は成り立ちませんし、高度成長期と違って将来の給料の右上がりが見込めません。今も将来も、収支を考えると夢を持てない状況にあるのです。 この子供世代が困っている状況に、親として一体何ができるのでしょうか。


◆家族内所得の再配分を考えてみよう

 団塊世代は、戦後の民主教育の影響で、平等と個人主義を生活信条に生きてきました。 おかげで、父子の関係はというと、対等でお互いに尊重しあい、母娘の関係は姉妹のような仲よしこよしとなり、結果、親から独立した自由な小家族の単位が、日本の主流となりました。この小家族主義、個を尊重する社会は、このままでよいのでしょうか?
 世代間の所得格差が問題となる現代社会では、家族全体の所得を世代間で再配分することで、家族間の絆が再生され、かなりの悩みが解決できます。私のような60代が知る「おじいちゃん」とは、ご隠居さんになってからは家督を長男に譲り、次世代の家族全員からは、「ご苦労様、ゆっくり休んでください」と敬愛の念をもって見られました。現代社会においては、大家族内の総資産を有効に活用することで、3世代の家族の幸せが継承できるでしょう。若年層の貧困化や老人の孤独死など、現代社会の諸問題もかなり解消されることでしょう。

 具体的に実行する方法としては、生前贈与の特例制度を使って、人生最大の買い物である住宅取得等の資金贈与(最大1500万円)を行ったり、教育資金の一括贈与枠(1500万円以内)で教育資金援助を行ったりということがあげられます。シニア世代の余裕資金の一部を、子供世代の家計援助に回す贈与をすることが、非課税で可能となるのです。最近は3世帯住宅の販売件数が年々伸びています。子供夫婦や孫たちと、日ごろから交流を深めることにもつながり、お互いに尊重し助け合える家族関係ができれば、老後の安心にもつながります。


家族内所得の有効活用について、ご家族で一度話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 山田 隆治

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2015年3月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。


【免責事項】
 かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。